注目される「科学技術都市」

平壌市恩情区域


 科学院などが所在する朝鮮の「科学技術都市」と言える平壌市恩情(ウンジョン)区域が注目されている。というのも今年を「強盛大国建設のための飛躍の年」と位置付けた朝鮮では、昨年に続き科学技術の発展が経済建設における大きな課題になっているためだ。【平壌発=李松鶴記者】

情報学校新設

 朝鮮では毎年、労働新聞、朝鮮人民軍、青年前衛という3つの新聞が共同社説を発表して1年の国家目標を示す。90年代後半の「苦難の行軍」と呼ばれた困難を克服して2年目になる今年の共同社説では、昨年に続きITなど、科学技術の発展とそれを担う人材の育成が大きな課題として浮上している。

 このため、科学技術分野では最高のレベルにある金策工業大学とともに、平壌市恩情区域が「科学技術都市」として注目を浴びているわけだ。

 以前には平城市に属していた恩情区域(1993年11月に平壌市に編入)が科学技術のメッカとして発展したのは1970年代のこと。これは金日成主席が1960年代末に打ち出した科学技術基地建設構想に従ったもの。この構想に従い、咸興市に化学工業都市、平壌と隣接する平城市に基礎科学基地が建設された。

 現在この地域には、科学院をはじめ理科大学、科学者図書館などの科学研究機関、教育機関が設置されており、昨年には情報学校も新設された。

現地指導転機に

 とくに科学院の存在は、科学者の集中、研究、交流を活発化させ国家の科学技術の発展に大いに寄与している。

 去る1999年の1月、金正日総書記がこの年の現地指導を科学院からはじめ、朝鮮がまだ「苦難の行軍」下、難題が山積していたとき、未来を見据え科学技術発展のための課題を示したことは記憶に新しい。

 この現地指導を転機に科学院では、最先端分野の研究が活発化している。ロボット研究所、自動化研究所、電子工学研究所とともに、プログラム研究センターでは科学技術計算プログラム、プログラム道具の開発が100余人の研究者によって進められている。

 恩情区域にあるさまざまな研究、教育機関では、主に基礎科学の研究に力点がおかれていたが、情報技術、情報産業が注目されるにいたり、コンピューター関連技術、電子工学にも大きな力が注がれ、その役割に期待が集まっている。

水準高い理科大学

 「理科大学は、学生数は多くはないが、水準は国際的に見ても見劣りしません」

 全国から集まってくる2000余人の学生が学ぶ理科大学キム・スンド学長は胸を張る。学長の年齢はまだ43歳だ。

 設立は1967年1月17日。卒業生はいずれも科学院などの最先端科学研究分野で活躍している。恩情区域で科学者夫婦として知られている、ユン・チャンヒョク、リ・ソナ両氏も理科大学出身。夫は同大学電子自動化学部研究士、妻は化学部教員である。

 現在、理科大学には数学学部、物理学部、生物学部など8学部、コンピューターセンターなど4つの研究所がある。

 キム学長によれば、今年の4月から全学部を4年制に改変、また博士院過程も3年に延ばす措置をとる。科学技術の発展という国家的要求にこたえるためだ。

 理科大学では数学、物理、コンピューター、外国語の教育に力を注いでいる。「どこに行っても有能な人材として活躍できるようにするため」とのこと。

 科学院、理科大学などを中心とする「科学技術都市」の存在が経済強国建設を本格的に進める今年の年頭から大きくクローズアップされている。

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