NHK青春メッセージ02で審査員特別賞受賞

最高の出会い!

東京朝高  徐慈美さん


 14日のNHK青春メッセージ02で審査員特別賞を受賞した東京朝高・徐慈美さん(高2)のスピーチ「最高の出会い!」の全文は次の通り。

◇                       ◇

 最近テレビやニュースでメル友に関する事件をよく目にし、そのたびに私はとても胸を痛めます。

 私にも何人かメル友がいます。

 その中のある1人の子と知り合えたおかげで私は大きく変わる事ができました。

 知り合ったきっかけは、とあるホームページの掲示板でした。パソコン上のニックネームを使い、私が掲示板に書き込んだことについて返事をくれたのです。相手は年下の女の子でした。

 そこから私たちはお互いメールを送るようになりました。

 家族のこと、友だちについて、時には相談や将来のことなんかもメールで送り合いました。

 でも私には1つ引っかかることがありました。

 それは私が朝鮮人であることを教えてなかったことです。

 私は朝鮮学校に通っています。そのため、授業の話題になった時など、全然知らない科目が出てきました。そんな時も私は知っているふりをしていました。

 本当のことを言えば、相手は引くのではないか、離れていくのではないか…。

 そして不安は次第に罪悪感へと変わっていきました。

 そんななか、今度は電話で話してみない?  ということになりました。私はとても喜びました。でも不安もありました。

 私はこのまま自分が朝鮮人であることを黙っていてもいいのだろうか…。

 喜びと不安を抱いたまま、受話器を取り、ダイヤルを押しました。

 姉妹はいないと聞いており、時間も約束していたため、本人だというのがすぐわかりました。

 私たちの第一声は、お互い「声がかわいい」ということでした。

 それまでに何度もメールをしていたためか、普段人見知りをする私も自然に話ができました。

 そして学校の話題になりました。

 彼女の学校では古典という授業があることを聞きました。

 「国語と古典って一緒に習っているの?」

 「うーん…」

 私は何て答えようか迷いました。

 私の学校では国語で朝鮮語を習っており、古典は日本語の授業の中に入っています。

 私は自分の国の言葉を否定してまで嘘をつきたくありませんでした。

 それにこれ以上彼女に隠しごとをしていることが何より嫌でした。

 そして私は恥ずかしさや不安を押しのけて思い切って「私…実は日本人じゃないんだ」と言いました。

 「え?!  じゃあどこの人?  何人?」

 「朝鮮人なんだよね」

 声は微かに震えて心臓はバクバク。

 相手の反応が恐ろしくて仕方ありませんでした。

 しかし私の心配をよそに受話器からはさっきより明るい声が聞こえてきました。

 「すごい!  いいなー。じゃあ朝鮮語も話せるんだよね!」

 この一言を聞いた瞬間、一気に体の力は抜けていきました。

 すごくホッとして安心して緊張感がほぐれていって、私の中にあった重いものがすーっとなくなったように思えました。

 今までなぜ、言えなかったか。

 多分、それは日本人=朝鮮人を嫌いだ、という偏見を私は持っていたからではないか。

 私と同じことを思っていた同胞もいるのではないでしょうか。

 でもそれは大きな間違いでした。

 人と付き合っていくのに国なんて関係ありません。

 だって私たちは電話でも会話でもメールでも1人の人間として信頼して接しているんですから。

 私は今でもその子とメールのやりとりをしています。

 できれば今度は会いたいとも話しました。

 新しい出会いとともにできた大切な日本の友だち。

 私に勇気をくれて、人は信頼して付き合わなければいけないということを教えてくれた彼女に伝えたいことがあります。

 ありがとう、これからもよろしく。

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