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急性肝炎(上)−症状と原因
初期症状はなく、カゼに似た症状で発病
約6割が5種のウイルスで発症
Q
急性肝炎について教えてください。
A 何らかの原因により、それまで健康だった肝臓で急激に肝細胞が壊れることです。沢山の肝細胞が短期間に壊れ、細胞内の酸素(AST、ALTなど)が血液中に逸脱するため血液検査で容易に肝障害が分かります。急性肝炎の最初の症状は、発熱、食欲が落ちる、身体がだるく元気がないなどです。即ち、急性肝炎に特有の初期症状はありません。原因の違いによりますが、これに吐き気、下痢、鼻水、喉の痛みなどが加わることもあり、風邪の症状と区別がつかないこともあります。しかし、肝細胞の破壊が広範に起こりそれが持続すると、肝臓の機能は急速に低下し、尿の色が濃くなり、目や皮膚が黄色くなる(黄疸)、出血が止まりにくい(出血傾向)などの症状が現れます。さらに、重症化すると、脳神経の機能が損なわれるため手の指がふるえ、意識障害などが生じ、ついには劇症肝炎という生命にかかわる危険な状態になることも稀にあります。 1997年1月から2001年9月末までの4年9カ月の間に、筆者が勤務する病院(手稲渓仁会病院、札幌市)に入院された急性肝炎の患者さんは全部で126名ですが、21名が重症化し、そのうち12名の方が劇症肝炎に進行しました。(図1参照) 図1.急性肝炎患者さんの臨床経過(1997.1−2001.9)
Q 急性肝炎の原因について知りたいのですが。 A 私たちが約5年間に診療した急性肝炎126名の原因を図2に示します。肝炎ウイルスと呼ばれるウイルスのうちで主なものは、A、B、C型の肝炎ウイルスです。これらA、B、C型の肝炎ウイルスは合計46名で、全体の37%を占めています。次に多いのは順にEBウイルス、サイトメガロウイルスと続きます。こうして見ると急性肝炎は、その約6割がこれら5種類のウイルスによって起きる病気であることがわかります。そのほかに、証明が難しい事が多いのですが、薬剤による急性肝炎もあります。図2では原因不明が約34%を占めますが、このうち薬剤で起きた疑いがある患者さんもいます。また、白血病など血液の癌を治療している途中でB型急性肝炎が発病した患者さんを経験したことがあります。肝臓にひそかに感染していたB型肝炎ウイルスが、免疫を抑える作用がある抗癌剤の使用により急激に増殖し、急性肝炎が発病したのだろうと考えました。しかし、原因がはっきりしない急性肝炎も依然として存在するので、原因を明らかにする努力は続けていかなければならないと考えています。 図2.急性肝炎126症例の原因(1997.1−2001.9)
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