山で元気!

黒岳
(1557メートル、大分県)

九州最後の秘境に絶句


 朝6時マイクロバスで多久市を出発。多久市朝日登山クラブ18人の一行は一昨年12月雨のため登れなかった大分県黒岳(1557メートル)に再挑戦した。

 登山口に着くとさんど笠とタヌキの毛皮を腰にぶら下げたマタギのような中年の男性がたっていた。初対面の人たちは「あの人をみたら熊だって逃げる」と驚きながら彼が何者なのか私に尋ねた。彼は山のガイドで九州の名物登山協会会長をしていて、愛好家らの間では「夏みかんのおっちゃん」というニックネームで親しまれていると紹介すると一同大爆笑した。

 「夏みかんのおっちゃん」が軽準備運動と登山の注意事項を話すといよいよ出発。午前9時、豊かな紅葉の原生林を歩き始める。

 他の仲間も過ぎ去りし青春が再び息を吹き返したと生き生きとした足取りで楽しそうに歩いていた。

 九州横断道路の山々は日本三大紅葉の一つとして知られている。由布院と湯布院、久住と九重と、山域を示す時区別するのがなかなか難しい。そうこうするうち、男池、隠し水、ソババッケ、オクゼリとひたすら山道を歩くと額から大粒の汗が地面に滴り落ちる。

 ほぼ2時間後、風穴(ふうけつ)に到着。ここは万年雪が残り夏は冷気が心地よい。九州最後の秘境「黒岳」はもうすぐだ。前進あるのみだが、途中で気分がすぐれない者が出たため、私を残して15人がもっとも高く険しい最後の難所を乗り切り頂上へ。

 「やった!  万歳!」の歓声があがる。頂上から3分の1ぐらい下ったところで風と雨が顔をさす。気温もぐっとさがり、仲間の吐く息が空気にふれると白くなっていた。山の百名水に数えられる男池に来ると皆自然と歓喜を表す。コバルトブルーの冷水が火照った体を元気に回復してくれた。

 ほんとうに山には夢とロマンがある。心の底から全力をつくし青春を取り戻した山の仲間らは、次に登る山を夢見ながら黒岳を後にした。(昨年11月登頂、朝日登山クラブ沈成達)

 【コースとタイム】登山口〜隠し水〜ソババッケ〜風穴〜男池(歩行時間7時間)

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