月間平壌レポート  2002.1

話題は「アリラン」、市民の心は4月に

公演準備着々と

「アリラン」のポスター(左)とイメージ画


 【平壌発=姜イルク記者】  本社・平壌支局が入居している平壌旅館が、新年を迎え大々的な補修工事に入った。

 「申し訳ありませんが、しばらくの間我慢してください」

 やむなく事務所を高麗ホテルに移動。その高麗ホテルでも客室の鍵を、従来の鍵からカードキーに切り替える作業が行われていた。

 解放山旅館も本格的な補修工事に入るなど、市内のホテルでは1月から一斉に、施設の更新・補修作業が始まった。

 4月末から6月末にかけて上演予定の10万人出演のマスゲームと芸術公演「アリラン」の準備を、出演者、舞台関係者が急ぐ一方で、数多くの海外同胞、外国人観光客を迎え入れる準備も着々と進んでいる。

 平壌市民は、5・1競技場で盛大に行われる「アリラン」に大きな期待を寄せ、話題も絶えない。

出演者の士気

 新年を迎えた市民の心はすでに4月に向いている。

 今年の4月には金日成主席誕生90周年を迎える。市民らのスローガンは歴史的な今年を輝かせることだ。「アリラン」やホテルの整備はその一環で、全国的にも各工場、企業所、共同農場、学校など、あらゆる分野が、成果をもたらそうと盛り上がっている。

 平壌は本格的な冬に入ったが、「アリラン」出演者たちは寒さをもろともせず練習に励んでいる。金日成広場、4・25文化会館前の広場などで、学生、青年たちの練習姿が日々見られた。5・1競技場内でも盛んに練習が行われているという。

 金日成広場を通りがかったある日、医者に連れられていく学生が、練習場に戻りたいと半べそをかきながらじだんだを踏んでいた。出演者の健康管理のため、出演者専属の「アリラン医療陣」が発足、病人を発見しては練習を休ませ、治療を施している。

 関係者は「出演者たちは観覧者の期待にこたえようと一心団結し頑張っている。かぜをひいた学生に医者が練習を休めと言っても聞こうとしないし、練習に遅れをとるまいと病気を隠そうとまでしている。出演者の士気は高まっている」としながら、「必ず素晴らしい公演を披露する」と語っていた。

テレビコマーシャルも

 一大国家プロジェクトである「アリラン」が、4月から上演されると公式発表されたのは11月。上演の半年も前から公開されるのは、異例中の異例といえるだろう。

 以後、労働新聞、民主朝鮮、平壌新聞などの各紙には、「アリラン」がどのような公演であり、どう行われるかなどの関連記事とポスターが数多く掲載されている。今年1月下旬になってからは、朝鮮中央テレビに「アリラン」のコマーシャル(約5分)が流れ始めた。

 朝鮮ではかつて、第13回世界青年学生祝典(89年)や「百戦百勝朝鮮労働党」(一昨年)など、人々をあっと言わせるようなマスゲームが数多く行われてきたが、民謡「アリラン」を主題にした今回の公演は、「前例のない内容と形式、膨大な規模で行われる公演」と伝えられている。

 「アリラン」に対する関心度は、平壌だけでなく、地方でも高いようだ。各地方からは、防寒具など公演の練習に必要な支援物資と激励の手紙が数多く寄せられているという。

ノートを片手に

 「話をかけないで」

 市民らは、仕事の合間をみながらノートを片手に、新年の共同社説の学習に必死だ。毎年1月中旬から下旬にかけて、工場、企業所などの職場でよく見られる光景だ。家に帰っても勉強しているという。

 朝鮮では毎年1月上旬、講師の指導のもと職場別に共同社説の学習が一斉に行われる。各自の自習、復習の期間をおいて、1月下旬には、すべての単位で質疑応答形式の「試験」が行われる。

 ある市民は、「気は抜けないが、決して負担には思わない。共同社説は、金正日総書記の意図がそのまま反映され、この1年間の国の方向が示されているので、朝鮮人民誰もが知らなければならない。試験といっても楽しみもあるんだ」と話していた。

 彼らの楽しみとは、歌の「試験」。数曲の朝鮮の歌謡曲が課題曲となり、指名を受けたひとは、それをみんなの前で歌うことになっている。音痴もいれば、緊張のあまり歌詞とメロディーが一致しなかったりで、笑いが絶えないという。

市民の期待

 新年の共同社説のタイトルは、「金日成主席誕生90周年を迎える今年を強盛大国建設の新たな飛躍の年に輝かせよう」。

 金日成主席誕生90周年を迎える今年、経済発展を望む市民の期待は大きい。人工衛星が打ち上げられ、社会主義憲法が改正された朝鮮民主主義人民共和国創建50周年、「苦難の行軍」の勝利が宣言され、朝米共同コミュニケが発表された朝鮮労働党創建55周年など、今までも大きな節目の年に画期的な出来事が起こってきた

 今年の4月には、強盛大国建設と祖国統一問題において、画期的な転換が訪れるという希望的推測と楽観、期待感が、市民の中で大きく膨らんでいる。

 「全ては、われわれの努力にかかっている」

 市民らは決意を新たにしながら、今日もノートを片手に出勤を急いでいる。

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