21世紀の同胞社会構築−19全大会課題遂行どう進める?(上)
同胞生活総合センター20全大会まで3万件目標に
河秀光・総聯中央同胞生活局長
昨年5月に開かれた総聯第19回全体大会は、21世紀に、◇民族性と同胞愛で結ばれた仲むつまじい同胞社会◇経済的に安定し、民族情緒にあふれた豊かな同胞社会◇日本と国際社会で堂々たる地位を占め、祖国と民族のために価値ある寄与のできる同胞社会――を築いていくというビジョンを打ち出し、こうした社会作りへの課題を示した。新年を迎え、課題遂行をどう進めていこうとしているのか。総聯中央同胞生活局、教育局の各局長に聞いた。
半数を解決 ―同胞生活局発足から2年。局の役割についてどう考えているのか。 同胞の生活と権利を守るのは総聯の使命だ。総聯中央はこの問題を最優先の課題として全面的に取り組むことを決め、専門部署として同胞生活局を新設した。 この間、日本全域を網羅した同胞サービスシステムを整備するために力を注いできた。同胞が抱えるあらゆる生活上の問題に誠心誠意こたえ、解決するためだ。結果、一定の実績と貴重な経験を蓄積した。その実例として同胞生活相談綜合センターの活動を上げることができる。 現在、支部を拠点に165のセンターが設置、運営されている。99年、00年と毎年1万件以上の相談が寄せられ、約半数を解決した。昨年度の相談案件の内訳を見ると、経営、融資など経済関係の相談が1927件で最も多く、ほかには民族結婚をはじめとする冠婚葬祭の相談が1841件、国籍、相続などの相談が1032件となっている。とくに民族結婚の相談は同胞結婚相談センターに寄せられるものを含めると日増しに増えている。長引く不況を反映して就職の相談も多い。 発足してまだ2年なので、地域差があり課題も多い。しかし、年間1万件以上の相談件数を見ても、センターに寄せる同胞の期待がうかがえる。京都、大阪、東京、愛知などのセンターでは同胞高齢者の通所介護施設をはじめ各種マダンを設立する新しい試みも実現した。 つねに同胞をくまなく訪ね、ニーズを正確に把握する。この活動スタイルなくしてセンターの存続はありえない。総聯が同胞に愛され、信頼される本来の姿を築くうえでもセンターの存在は必要不可欠だし、その生活力は日増しに強まっている。 急務な民族教育権 ―同胞を取り巻く経済情勢は厳しい。同胞の生活を守るうえでの課題は。 19全大会でわれわれは21世紀のビジョンとして、仲むつまじく豊かで力ある同胞社会の実現を打ち出した。理想の同胞社会を実現するうえで重要なことは同胞が民族的アイデンティティーを持って相互扶助し、われわれが多様多彩なニーズをキャッチして同胞に生活上のメリットを提供することだ。これらを総聯のサービスシステムを通じて解決したい。 当面の最重要課題は2つ。民族金融機関の再生と民族教育権の擁護、拡充だ。民族金融機関なくして、同胞、とりわけ若い世代が安定した生活と経済活動を行うことは不可能だ。現在、「ハナ信用組合」など各地で新しい組合を立ち上げるため奮闘している発起人と同胞の活動に力を得ているし、私も微力ながらがんばっていきたいと思っている。 また、民族教育権を拡充する問題は、同胞が民族の尊厳をもって生きていくための死活的な問題だ。 朝鮮学校を取り巻く環境は変わり、同胞のたび重なる要請、日本市民の支援によって一部の地方自治体から助成金が支給されるようになった。しかし、その額は微々たるもので保護者の財政負担はまだまだ重い。そこに追い討ちをかけるかのようなこの不況。各地のセンターでは、朝鮮学校の財政基盤の確立に力を入れ、地方自治体に対して助成金支給、増額を強く求めていかねばならない。 同胞生活局は日本政府に対して民族教育の権利保障を求める要望や働きかけをしていく決心だ。また、国連などの国際会議に積極的に参加することも重要だ。 過半数以上の同胞に ―センターの課題は。 2年後の20全大会まで、各地のセンターで3万件以上の相談を解決することを目標に定めている。より多くの相談を受け付け、目に見える形で解決する「力」をつけなくてはならない。 そのためにはまず、各センターで、過半数以上の同胞を訪問するシステムを完備する必要がある。さまざまな準備を4月までに終わらせる予定だ。 第2に広報活動に力を入れる。センターの存在と内容を地域の同胞に知ってもらわなくては相談も上がってこないからだ。そこで各地のセンターには地域情報紙の活用を提案している。昨年だけでも約100種に及ぶ情報紙が2万5千戸の同胞の家庭に配布された。今後もセンターは地域の幅広い同胞をつなげるステーションとして、生活相談だけではなく、各種文化サークルや朝鮮語講座の開催など文化的な拠点も目指したい。 第3に相談員らによるセンターの機能強化だ。各地のセンターは専門家の発掘、相談員の実務能力の向上、行政との連帯をはかり、同胞のさまざまな相談に迅速に対応できるようスキルアップすべきだ。 なんといっても同胞とセンターの間に信頼関係あってこそ、同胞は相談してみよう、という気になる。同胞が抱える問題を的確に察知し、それを解決する実務能力と情熱を持つ。同胞生活局と現場の相談員らが常に堅持していくべき姿勢だと心に刻んでいる。 弱者を大切に ―高齢者、障害者問題についての構想は。 同胞高齢者、障害者は二重、三重の負担を強いられている弱者だ。この問題に関しては当事者の立場に立って本腰を入れて取り組みたい。昨夏、長野で開かれた在日同胞福祉連絡会総会と同胞障害者とその家族の交流会に参加し、彼らが抱える問題と思いに触れた。同胞社会が彼らの生活をあらゆる形でバックアップしなければと痛感した。 現在、全国のセンターを通じて無年金状態に置かれている同胞高齢者や障害者の実態調査を進めている。生活実態を把握し、日本政府に対する要望を含めた対策を講じる考えだ。 1世同胞の生活を具体的に支援し、彼らが生きがいを持って生きられるよう、環境を整備する必要がある。高齢者が集える通所施設も各地朝鮮学校の学区単位に必要だろう。 ボランティアの輪も広がっている。今後も高齢者、障害者とその家族の意思を尊重しながら、積極的にバックアップしたい。 |