朝鮮人強制連行真相調査団、名古屋で全国協議会

進んだ朝鮮北部への調査

朝鮮人強制連行真相調査団2002年全国協議会
(26日、名古屋)


 朝鮮人強制連行真相調査団の2002年度全国協議会が26日、名古屋市内で行われた。協議会では、朝鮮侵略の事実をわい曲した歴史教科書が日本の教育現場に持ち込まれ、朝鮮半島有事を想定した軍国主義化が急速に進む情勢を踏まえたうえで、歴史の事実を明らかにする調査団の活動の意義が重ねて強調された。また被害者の証言収集と記録を続け、日本や南朝鮮の国会に上程されている真相究明法案の成立に努めるなど、今年の活動が討議、決定された。27日には岐阜県で強制連行跡地のフィールドワークが行われた。

◇                    ◇

 協議会には、調査団の共同代表である鈴木二郎・東京都立大学名誉教授(日本人側)と河秀光・総聯中央同胞生活局長(朝鮮人側)をはじめとする全国の調査団メンバーと金鎭度・総聯愛知県本部委員長ら50余人が参加した。

 あいさつした河秀光共同代表は、1972年の結成以来、調査団が被害者の尊厳回復のための調査活動を行った結果、30の都道府県で強制連行の実態が明らかになった、と指摘。東アジアの平和に逆行する日本の動きに歯止めをかけ、朝・日国交正常化を促すうえでも調査団の役割と活動の重要性は日増しに高まっていると強調した。

 3年ぶりに各地の調査団が一堂に会した協議会ではまず、この間の活動と経験などが発表された。

 調査団はここ数年、強制連行がもっとも多かったとされる1944年の実態解明に力を入れてきたが、岡山、山梨では強制連行者数を推計するうえでの貴重な資料となる知事引継書の公開を実現させた成果が報告された。

 また、朝鮮半島北部からの強制連行の実態について愛知調査団が特別報告を行った。

 同調査団は、朝鮮半島北部からの連行者数が多かった中島飛行機半田製作所に対する調査を10年がかりで進めた結果、朝鮮民主主義人民共和国で被害者を見つけ、強制連行者全員の名簿を完成させた。調査に全面協力した半田市の竹内弘・元市長の訪朝と在朝被害者・崔★(广に異)天さんの対面も実現させた。

 協議会に参加した竹内元市長は、昨夏、崔さんら被害者の訪日が日本政府によって妨げられた事実に触れ、「真実は必ず明らかにされるべきだ。今年こそは崔さんを半田に招待したい」と熱く語った。

 強制連行の事実を日本市民に広く知らせる活動では千葉、兵庫の試みが目を引いた。千葉調査団は「日朝友好大網白里町民の会」と町教育委員会とが合同で日立航空機大網地下工場における朝鮮人強制連行の事実を明記した表示版を建立した経験を報告。兵庫調査団は昨年から日本の小中高生とともにフィールドワークを始めた試みを発表した。

真相究明法の成立めざす

10月に全国交流集会

 調査団は今年、「日・朝国交正常化と日韓条約の見直しを!」を目標に掲げ、活動を進めていく。

 朝鮮人強制連行は日本政府が関連資料の多くを焼却したり公開していないことから、その全貌はいまだ明らかにされていない。

 調査団は今年も情報公開制度を活用し、調査の手がかりとなる知事引継書や市町村の寄留簿、学籍簿、除籍簿などの公開を行政に促していく。

 現在日本、南朝鮮では日本の植民地支配の真相解明を促す各種法案が国会に上程されている。日本では「国立国会図書館法の一部を改正する法案」と「戦時性的強制被害者問題解決補償法案」が継続審議中で、南朝鮮国会には昨年10月、「日帝強制占領下強制動員被害真相究明等に関する特別法案」が提出された。米国の連邦議会では2000年12月に「日本帝国政府記録情報公開法」が成立、調査が進行中だ。調査団は今年、日本と南朝鮮でこれらの法律が成立するよう、国会議員や市民への働きかけに力を入れる。

 また強制連行被害者や関係者の証言収集もその幅を広げ、質的な向上をめざす。つまり、渡日の経緯から強制労働の実態についてより詳しい証言を集め、関係資料との照合もはかることで実態をより深く解明しようというものだ。また、行政などとタイアップし、千葉・大網のような歴史の事実を明記した表示板を設置したり、跡地の保存もはかっていく。

 調査団は結成当初から調査結果を教育現場に還元する活動を重視してきたが、各地の教育委員会や教育関係者と協力して教員の研修や教材化を実現していく。

 こうした活動とあわせて「朝鮮人強制連行調査の記録」の出版にも力点を置くことが確認された。すでに四国、大阪、兵庫、中部・東海、中国編が出版されたが、今年は関東編を完成させ、九州、東北・北海道、関西編の準備にも着手する。

 そして今年10月19〜20日には、神戸市で第7回全国交流集会を開く予定だ。

◇                    ◇

 被害者の尊厳回復をはかる運動は、被害者が年々亡くなっている実情から切迫した課題になっている。現在、日本弁護士連合会に対して強制連行、関東大震災、治安維持法による被害者がそれぞれ人権救済の申立をしており、強制連行と大震災に関しては今年中に判断が出る予定だ。調査団では日弁連の判断が出しだい、日本政府に謝罪と補償を促す世論を盛り上げるため、報告集会を開く。

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事