インタビュー
時代の流れとともに変化
朝鮮大学校・呉圭祥教務部長に聞く
2003学年度から朝鮮大学校の一部の学部と学科を統合して新たな学部、学科が設けられることと関連し、呉圭祥教務部長に、その目的と背景、当面の構想、学生について聞いた。
人材育成 情報化社会、科学技術の発展に対応 ―一部の学部と学科を再編成する目的と背景は。 目的は一言で言うと有能な人材を育てる≠ノ尽きるが、背景は大きく分けて3つある。 まず1点目は、それが世界的な趨勢であるからだ。21世紀は、情報化社会、科学技術の時代と言われており、そうした時代の流れに対応できる人材を育てるには、大学教育のシステムを改善する必要がある。例えば日本では、科学技術の発展速度に相応する人材を育てるため、国立大の統廃合、独立法人化など大学教育の全般を再検討し、改革を進めようとしている。本学もそうした目的から今回の措置を講じた。 2点目は、国際情勢が大きく変ぼうする中で、国際社会、国際舞台に積極的に進出して活躍できる人材を育てるためだ。 とくに6.15共同宣言発表後、朝鮮半島を取り巻く情勢は時々刻々と変わりつつある。北南間では最近、鉄道・道路の連結着工式が行われるなど和解と協力が進み、対ロシア、中国との間では友好関係がこれまで以上に緊密になってきている。朝・日間では初の首脳会談が実現し、「国交正常化を早期に実現」させることで合意した。また中国との国境沿いにある朝鮮西北部の新義州が特別行政区に設定されるなど、経済改革も進んでいる。これら一連の動きは、朝鮮半島ひいては東北アジアの平和と安定、発展に大きく寄与するものだ。在日同胞も決してこうした動きに無関係ではなく、民族の一員として貢献、活躍できるチャンスが拡大してきたと言える。 3点目は、そのような情勢の流れに乗り遅れるのではなく、在日同胞社会もそれに応じて発展させなければならず、そのような人材を育てるためでもある。在日同胞社会は21世紀を迎え、1、2世から3、4世へと世代が変わり、自己の民族性をいかに守り通すかが非常に重要かつ緊急な問題として浮かび上がっている。そのためには教育が最も重要であるということは万人が認めている。 ―時代の流れとともに大学も大きく変わろうとしているが、当面の構想は。 要点的に言うと、@同胞子弟を民族の一員として立派に育てる民族人材育成機関A民族教育の最高学府、科学研究の拠点B豊かな同胞社会の実現に寄与する拠点C海外全同胞の情報・文化・交流の拠点―にすることだ。 ここではとくに、Cを中心に述べたい。 6.15共同宣言発表後、本校には南の著名人をはじめ世界の同胞が訪ねてくるようになった。その事実だけを見ても、本学は海外同胞の情報・文化・交流の拠点になりえる。 訪問者が一様に驚くことは、異国の地に住みながらも母国語を使用し、自主的に学校を運営しているということだ。彼らは世界に例を見ないもの(民族の誇り、民族共通の財産など)として大いに評価していた。また、母国語、日本語、英語のトライリンガルになれる環境も整っている。 ―これまでも民族を愛し、同胞社会を担う立派な人材を育ててきたと思うが。 卒業生は1万3000人を超え、在日の社会はもちろん、日本社会、国際舞台でも活躍している。 例えば現在、日本の国立大学、研究機関に勤務している卒業生は20数人を数える。 また、欧米での研究活動を通じてりっぱな成果を上げ、国際的な評価を得た卒業生もいる。 本学を卒業したからといって日本大学同等の「卒業資格」がないのは事実だ。しかし、現在、京都大学大学院をはじめほとんどの国立・私立大大学院が朝大(卒)生に門戸を開くなど、朝大が日本の大学と「同等」であると認めざるを得ない状況になってきている。 ―全寮制で学ぶ学生たちの生活は。 一昔前とは大きく変わった。一言で言って、ゆとりがあり、のびのびとした生活を送っている。 衣食住に関しては、学生のニーズ、時代のニーズに合わせて改善に改善を重ねている。 食事は栄養のバランスも考えながら、学生たちの嗜好に合ったものを出している。 一方、大浴場のほか、最近ではシャワー室も設置した。また各寮の建物にある娯楽・文化室のほかに、女子専用の文化室も設けた。生活に必要なものは最低限整っている。 また2006年の大学創立50周年に向けて、寮の全室を補修する予定で、すでに工事は進行中だ。 スポーツ・芸術サークル活動も活発だ。 サッカーやバスケットボール、卓球、バレーボールなどは関東リーグなどに加盟し、朝・日親善を深めながら技能アップを図っている。サッカーや柔道の国家代表に選ばれた学生もいる。 吹奏楽、民族管弦楽などのサークルも活発だ。 最近では、ボランティア活動に自ら進んで参加する学生が多く、大きな関心を集めている。 教職員らはこれからも学生たちが自らの才能を100%発揮できるよう、よりよい教育環境を整えていくつもりだ。そして、民族性が豊かで、統一祖国と民族、在日同胞社会の未来を担えるニューリーダー、専門家を育てていきたい。(羅基哲記者) |