春・夏・秋・冬

 「われわれは互いに異なる意見を持っているが、共同の目的のためにともに努力するならば、いくらでも問題を解決でき、直接会談を通じて相互理解を増進できる」。カーター元米大統領が1994年に訪朝した際に語った言葉だ

▼米ブッシュ政権が対イラク武力行使の準備を着々と進める中、カーター氏が今年のノーベル平和賞を受賞することが決まった。国際法や人権を尊重し対話による紛争解決をモットーとしてきた氏への授与には、軍事力に頼るブッシュ政権に対する選定委員会側の痛烈な皮肉が込められていることは言うまでもない

▼そのカーター氏がCNNの取材に対し、最大の業績としてまっ先に挙げたのが「朝鮮」だった。核不拡散条約(NPT)からの脱退宣言で当時のクリントン政権は空爆を検討、朝鮮半島は一触即発の危機的状況にあった。カーター氏の訪朝で実現した金日成主席との会談を通じてその危機は回避された。もし空爆が実施されていたなら、朝鮮半島は戦場と化し、無辜の市民が数多く犠牲になったに違いない。「平和を守る」という共通の目的のために虚心坦懐に話し合ったからこそ、最悪の事態を避けえたのだ

▼ブッシュ大統領には、カーター氏の受賞から多くのことを学んでほしいものだ。「米政権への皮肉と思うか」との質問に「ノー」と答えているようでは、大きな過ちを犯しかねない。平和的解決を望む世界の人々のメッセージと受け止めるべきだ

▼イラク問題にとどまらない。対朝鮮問題においても、「カーター式」を踏襲しなければならない。(聖)

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