みんなの健康Q&A
胃の病気(上)−胃炎、胃潰瘍
胃潰瘍の原因70〜80%がピロリ菌に感染
Q:まず胃の仕組みと働きについて教えてください。
A:胃の主な役目は、食べ物を消化することです。食べた物を一時的に蓄えたり、食べ物を腸へ送り出す働きもあります。食べ物は、食道とつながった噴門と呼ばれる入り口から胃に入り、胃角と呼ばれる曲がり角で大きく曲がり、幽門という出口から十二指腸へ出ます。胃の壁は、1センチくらいの厚さで、内側から粘膜層、粘膜筋板、粘膜下層、筋層、奨膜下層、奨膜という多層構造となっています。粘膜層にあるいろいろな細胞から塩酸(胃酸)やペプシノーゲンといった消化酵素が分泌されています。 Q:胃の病気にはどんなものがありますか? A:いろいろありますが、胃炎、胃潰瘍、胃癌が代表的です。 Q:胃炎とはどんな病気ですか? A:胃炎には急性胃炎と慢性胃炎があります。急性胃炎は、ストレス、薬(鎮痛剤など)、暴飲暴食、コーヒー、香辛料などの強い刺激が原因で、胃の粘膜が傷つくことによって起こります。よく飲みすぎた後に胃が痛くなるのは急性胃炎です。次に、慢性胃炎は、急性胃炎とは異なり、原因がなくても自然に進行する胃炎です。急性胃炎のような強い症状はありませんが、なんとなく胃がもたれる、胃が重い、むかつくといったものです。 Q:よく胃がもたれます。原因は慢性胃炎だったのですね? A:微妙な質問です。確かに胃がもたれると言う人に胃カメラをすると慢性胃炎が見つかる事が多いのですが、まったく異常のない人もいます。こういったものを最近ではNUD(ノン・アルサー・ディスペプシア)=潰瘍のない上腹部不定愁訴という用語を使います。これは心理的なものや自律神経が原因とも言われています。 Q:それではなぜ慢性胃炎になるのですか? A:少し前の医学書には、慢性胃炎は原因不明と書かれていましたが、最近になりヘリコバクター・ピロリ菌と言う細菌の持続感染であると言う事がわかってきました。 Q:ヘリコバクター・ピロリ菌とは? A:長い間、胃の中には細菌なんか存在しないと信じられてきました。しかし、1980年代にオーストラリアで胃の中でしっかり生きている菌が発見されました。長さ約4ミクロンで、4〜8本の毛がはえており、この毛がヘリコプターの様に回ることから「ヘリコバクター」と名付けられました。 Q:どこから感染するのですか? A:まだ、免疫力が弱い幼児期に汚染された水、食べ物、唾液から感染すると予想されています。上水道の整備の悪い国が流行地です。日本では、年配者で高い感染率を示していますが、若い人には流行していません。 Q:ピロリ菌はなぜ胃の中で生きられるのですか? A:胃の中はものすごい酸(胃酸)で満たされています。食べ物と一緒に口から入ったばい菌は、胃酸により死滅します。しかし、ピロリ菌は自分の周りをアルカリ性にして酸を中和して生き続けるのです。 Q:ピロリ菌はなぜ胃炎を起こすのですか? A:ピロリ菌は、何種類かの毒素を分泌します。これが胃の粘膜を刺激して炎症を起こします。ひどい場合は潰瘍をつくります。 Q:胃潰瘍の原因もピロリ菌ですか? A:全てではありませんが、十二指腸潰瘍を患う人の90%以上、胃潰瘍を持つ人の70〜80%がピロリ菌に感染していると言われます。かつて、潰瘍はストレスや暴飲暴食による胃酸過多が原因とされていました。しかし、これらは胃粘膜を刺激する潰瘍の促進因子だったのです。事実、胃酸を抑える薬を飲むと確かに潰瘍は治りますが、その薬を止めると約8割の人で再発すると言われています。しかし、ピロリ菌を除菌することにより、ほとんどの人で再発しなくなります。 Q:ピロリ菌に感染すると必ず潰瘍になるのですか? A:いいえ、そうではありません。感染するとほとんどの人で慢性胃炎になりますが、潰瘍までなる人はごく一部です。 Q:ピロリ菌の除菌はどうすればいいのですか? A:まず、消化器科のある病院や診療所で潰瘍になっているかということを、X線バリウム検査か内視鏡(胃カメラ)で確認します。そして、潰瘍が確認されれば、ピロリ菌に感染しているかを検査します。これには、胃カメラを使う検査、血液や尿を採取して行う検査、薬を飲み一定時間後に吐く息を採取して行う検査があります。いずれかの検査により潰瘍が確認され、ピロリ菌に感染していることが判れば除菌の適応です。除菌には3種類の薬剤を1週間服用します。その後、ある一定期間をおいて除菌ができたかどうかを調べます。これにより約90%の人で除菌ができると言われています。 |