われらのチャンプ 洪昌守ストーリー -7-

朝鮮学校生徒いやがらせに怒り

「真の友好」訪れる日まで


道険笑歩

トランクスに「座右の銘」を記し、リングに上がる(8月26日、さいたまスーパーアリーナ)

 12月20日、大阪城ホールでWBC世界スーパーフライ級チャンピオン、洪昌守選手の6度目の防衛戦が行われる。相手は指名挑戦者のジェリー・ペニャロサ(フィリピン)。昨年9月、3度目の防衛戦で対戦し「過去30戦中、一番苦戦を強いられた」強敵との因縁の対決だ。地元大阪では2年ぶりとなるタイトルマッチ。「最近は関東での試合が多く、とても寂しい」という同胞たちの声が上がっていただけあって、いっそうの盛り上がりが期待される。

 「北へ帰れ」「死ね」…。朝・日平壌宣言調印直後から荒らされ始めた洪昌守選手の公式ホームページ(URL=http://www.chang-su.com/)掲示板は、会談から一夜明けた9月18日、閉鎖を余儀なくされた。1カ月が経った現在も再開のめどは立っていない。

 国籍を問わず利用する全国のファンにとっての最大の魅力は、本人が掲示板に訪れること。毎日のように書き込んでくる「常連ファン」のことを、洪選手は親しみをこめて「カキコマー」と呼ぶ。彼らにとって掲示板は情報交換はもちろん、洪選手の「生の声」を聞け、また自分の声が洪選手に伝わっていることを確認できる交流の場でもあった。

 一部の悪質な嫌がらせにひきかえ、閉鎖から現在まで500通以上の励ましのメールが送られてきているだけに、洪選手自身も今回の措置に「本当に残念だが閉鎖はあくまで一時的なこと。必ず再開するので、『カキコマー』のみなさん、期待しててください」とメッセージを送る。

埼玉初中を訪れた洪選手(7日)。「元気いっぱいの子どもたちにかえって勇気づけられた」

 掲示板同様、朝・日首脳会談以降、在日コリアンへの嫌がらせが相次いだ。矢面に立たされたのは、朝鮮学校に通う幼い児童・生徒たちだ。

 洪選手自身、東京朝高時代に多発した「チマ・チョゴリ事件」で被害にあった同級生たちを目の当たりにしてきた。当時から人一倍正義感が強く、「抵抗できないか弱い女生徒ばかり狙われる。そんな弱い者いじめのようなことは許せない」と憤りを隠せなかった。

 その時から10年近くが経ったが、朝・日間で懸案問題が浮上するたびにのこのような事件が起こる状況はまったく変わっていない。現在も子どもたちはチマ・チョゴリではない第2制服での登校や集団下校などを強いられる毎日だ。

 「自分に対する中傷より、朝鮮学校の子どもたちへの被害が心配。僕が試合に勝つことで、後輩たちに元気と勇気を与えたい」(洪選手)

 「今回は久々の地元開催。『同胞のチャンピオン』を気合入れて応援に行きます」(主婦、45)、「ロードワーク中にすれ違い、声をかけると必ず『オウ!』と応えてくれた。これからも応援し続けたい」(中3男子)…。

 厳しい情勢のなか、彼の活躍を待ち望む同胞たちの期待を一身に背負いながら、彼は笑って答える。

 「朝・日が手を取り合う『真の友好』が訪れるその日まで、道険しくとも笑いながらともに歩いていきましょう」(李明花記者、おわり)

 

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