それぞれの四季
「秘伝のタレ」
「啓先
1カ月間、お嫁さん3人でシアボジの夕飯の仕度をすることになった。3人でローテーションを組むので、1人当たりたった10日間なのだが、私にとってはされど10日である。
もともと料理は不得意だし、子供が生まれてからはもっぱら手抜き料理、何を作っても文句を言わないダンナのおかげで(?)、料理の腕は全然上達しない。チェサの準備で豆もやしのひげ取りが私の主な仕事だと言えば、料理の腕前がどれほどかわかってもらえるだろう。こんな私にとってシアボジの食事の仕度をするということは、まさに一大事であった。 まず料理本を開いて献立を考える。夕飯の時間から逆算して2時間前から仕度をはじめる。新婚当初に戻った気分だ。牛肉のスープに、煮魚、かぼちゃの甘露煮、マカロニサラダ、冷奴。本に書いてあるとおり作ったから味はまずくないと思う。「こんなに作らなくてもいいよ」。シアボジは黙々と食べていった。 2日目、3日目も料理の本とにらめっこ。シアボジの口に合うものを考えて作ったが、反応は薄かった。万策尽きて焼肉を作った。シオモニがくれた秘伝のたれをもみこんで焼くだけの簡単料理。シアボジは「おいしい、おいしい」と言って食べてくれた。 シアボジの「おいしい」はどんな豪華な料理でもなく、きっと「オモニの味」だということに気が付いた。長年食べなれた味。それぞれの家庭に伝わる味。それを守り、伝えていくことはとてもすてきで大切なことだと思う。たくわん、納豆、味噌汁…。日本食に慣れたうちの食卓にも、「オモニの味」をぴりっときかせよう。(主婦) |