「平和のメッセージに英知と勇気で応えよう」

間近に迫ったピョンヤン学生少年芸術団の日本公演


 ピョンヤン学生少年芸術団の日本公演開始まで残りわずか。28日の訪日以降、芸術団は30日から来月22日まで、日本各地13都市で23回の公演を行う予定だ。主催は在日本朝鮮青年商工会(以下、青商会)を中心とした若手在日コリアンたち。未来を担う在日の子供たちに民族の誇りを与え、朝鮮と日本の友好関係を深めるため、厳しい情勢下でも公演実現に向けて奮闘している。

同胞の声

 東京では約50人の実行委員らが、連日、若い世代の同胞や日本人に公演をアピール。神奈川でもすでにチケットの98%が売れた。北海道など地方都市でも、チケットの予約が後を絶たない。青商会の熱心な活動ぶりに、各地同胞、朝青員らの間でも、日増しにピョンヤン学生少年芸術団の公演に対する関心は高まっている。

 そんな中、「絶対、見な損!」と熱く語るのは、愛知県名古屋市在住の安在秀さん(26)。朝鮮大学在学中に祖国を訪問し、万景台学生少年宮殿で学生たちの公演を見たが、本当に涙が止まらなかった。「とにかく『すごい!』の一言に尽きる。特に期待しているのは、角刈りの男の子の演技。歌、ドラムなど何でもこなす。今後の朝・日両国の関係改善の良い機会になればと思う」と話した。

 一方、大阪市生野区の玄誠志さん(24)は、初級部1年生のとき、初めてピョンヤン学生少年芸術団の公演を見た。「カーテンコールが鳴り止まなくて、すごく感動したのをおぼえている」。また、同じ生野区の李剛士さん(23)は「今からすっごく楽しみにしている。16年前の公演は、自分と同い年くらいの子供がすごい芸を披露したので、とてもびっくりした。日本の情勢は厳しいけれど、ピョンコマブームでこの雰囲気を一気に変えたい」と語ってくれた。

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 拉致報道後の朝鮮学校生徒たちへの相次ぐ嫌がらせ…。うんざりするような状況に身を置いているからこそ、ピョンヤン学生少年芸術団の訪日公演に寄せる同胞たちの期待は大きいのかもしれない。「ウリナラの子供たちのすばらしい公演を見れば、日本の人たちにも『朝鮮てそんなに悪い国やないんやな』ってわかってもらえると思う」(玄誠志さん)。

 21世紀、朝鮮の歌と踊り、民間交流を通じて日本と朝鮮の友好関係を構築していくためにも、チビッコ芸術大使たちの大いなる活躍が期待される。(金潤順記者)

日本各界の声

 地域を基盤にした若者たちで結成する日本青年団協議会はピョンヤン学生少年芸術団日本公演の後援団体である。同近藤佳成常任理事は「全国の青年団に朝鮮の文化を紹介できる良い機会だと思っている。ぜひこのチャンスを見逃さないでと日本中の若者、子供たちにアピールしていきたい」と力強く語る。

 「日本の未来と朝鮮の未来を担う世代が、出会い、手を取り合い、共に生きる社会を築いていく契機になるよう手助けしていきたい」と語った。近藤さんは先日茨城県で開かれた「コリアンユース・スポーツフェスティバル2002」でも会場に足を運び、連帯のあいさつをしたばかり。主催団体の朝青とは78年からのつきあい。メディアの大々的な拉致報道に胸を痛め、「日本は朝鮮半島を侵略し、植民地支配をした拭いがたい過去がある」と指摘しながら、両国民が怨嗟を募らせるのではなく、互いに友好を確認し、相互理解を深めていくために「今回の公演を突破口にしたい」と位置付けている。

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 フリーのジャーナリストとして、教育、環境問題、さらに「従軍慰安婦」問題などの市民運動に参加して幅広い視点で話題作を発表してきた竹見智恵子さんも今度の公演を心待ちにする一人。

 「チャンゴの音色に魅せられ、在日の友人の手ほどきで素人演奏を楽しんでいる私にとっても、今回来日する少年少女たちの公演がとても楽しみです。現在、日本の社会状況は決していいとは言えません。『正常化』を目指したはずの平壌首脳会談は、思いがけない方向へ急ターンしてしまいました。過去の清算をしてこなかったツケに日本人として胸が痛みます。今後は、在日を含む朝・日のおとなたちが冷静な話し合いの中で解決すべきでしょう。

 来日する少年少女たちには、思い切り演奏を楽しみ、技量を発揮してほしいと思います。彼らの演奏が、きっとおとなたちの縮んだ思考を解きほぐしてくれることでしょう」

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 また、東京都小金井市の市民運動家で、新聞「野火」を発行しながら、平和と反戦、日朝正常化などを強く訴えてきた桜井善作さんも拉致事件で騒然とする中での今度の日本公演が「無事に幕を開けるよう期待している」と指摘、「両国の緊張緩和と平和、和解への一歩となるよう念じている」と次のように述べた。

 「小泉首相の訪朝が拉致問題に絞られて、北朝鮮はやはり『悪の枢軸国家』などという論議ばかりが目立つが、こんなことでは日本はまた、近代の歴史の過ちを繰り返しかねない。事実をしっかり見つめると同時にその歴史的背景、国際政治の背景を見据えた冷静な視点が必要である。そんな時に平和のメッセージを携えて訪日する平壌からのチビッコ使節を温かく迎えて、『共に平和を築く英知と勇気を持とう』と日本社会に強くアピールしていきたい」。

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