センターよもやま話―生活の現場でB

ヘルパーボランティア 独自の養成講座運営

人材育成/京都「エルファ」の場合


ケアマネージャーも

 「同胞高齢者に穏やかな晩年を」と、1世の介護に取り組むNPO法人京都コリアン生活センター「エルファ」(鄭禧淳理事長)。00年4月に訪問介護サービスから始め、昨年3月には南九条にデイサービス施設を開設、今年6月にはウトロ地区がある宇治市にデイサービス施設を作った。当初、利用者は5、6人だったが、口コミで評判が広がり、110人の同胞高齢者が利用するまでになった。

ボランティア講座では視覚障害者の生活を感じ取ろうとアイマスクをつけて外出してみた

 利用者の9割は女性。昼食にキムチが並び、朝鮮の歌が響く。何より昔なじみの友達に会えると好評だ。

 京都府に住む65歳以上の同胞高齢者は5553人(01年末現在)。「エルファ」は彼らの介護を一手に引き受けようと、専門資格を持つ人材の育成に取り組んできた。

 まず、同胞ヘルパーの育成に着手した。異国で苦労を重ねてきた1世のウリマルに耳を傾け、食事や入浴のサービスを施すヘルパーは、介護サービスの鍵を握る存在だ。短期間で多く育てる必要があったため、独自で養成講座を開けるよう努めた。

 第1段階として、00年8月に福祉法人「くらしのハーモニー」の協力を得てヘルパー2級養成講座を開講。その後、講師に登用する同胞医療人を発掘したりNPO法人を取得した結果、昨年7月に府知事から訪問介護員養成研修事業者の認定を受け、9月には独自に講座を開くまでになった。今年6月には2回目の講座を開講。現在は30人の同胞ヘルパーを抱えている。

 同時に、日本人とは歴史的経緯、生活習慣が異なる1世に適切な介護サービスを施すため、ケアプラン(介護サービス計画)を作成できる居宅介護支援事業所への昇格を目指した。

 職員で看護師の朴三紀さん(33)がケア・マネジャーの資格を取得したことによって、今年5月から念願の同事業所に昇格。より専門的なサービスを提供できるようになった。

月1回障害者の集い

 「エルファ」は介護サービスのほかにも障害者を育てる家族のネットワーク作りや子育て支援にも取り組んでいる。高齢者、障害者ら、社会のシステムからこぼれ落ちる弱者を支える活動で欠かせないのがボランティアの存在だ。ゆえに、発足当初から送迎、食事、傾聴など、さまざまなボランティアを呼びかけてきた。

 障害者の家族が交流する「エルファムジゲの集い」は月1回のペースで行われているが、この場には、朝高卒の大学生や会社員らがボランティアとして参加している。しかし、「助けたい」気持ちでいっぱいの彼らも、当初は何をしていいのかわからず、立ちすくんでいたという。

 そこで、「さまざまな背景を持つ障害者やその家族の思いを想像できる心の目、力を育もう」(職員の呉純愛さん、24)と今年の4月、初のボランティア講座(5回)を開くことに。

 講師には、障害者の地位向上のための実践に取り組んでいる人を、と両足と左手指麻痺の障害を持つ村田孝雄さんや京都ろうあネットワークの永井哲さんらに依頼した。

 村田さんは、95年の退職後、京都、滋賀、奈良、大阪の名所、観光施設3500カ所を電動車イスで走行し、その先々でバリアフリー度を調査。社寺や史跡、美術館、トイレなど一件一件を◎、○、△、×の4段階に分類し、4冊のガイドブックにまとめた。自分が出歩くことで社会のバリアフリーを進めている行動家だ。そのほかにも視力や聴力の障害を持つ人の生活を実体験するため、アイマスクや耳せんをつけての外出も試みた。連続手話講座も2度開いている。

 講座は40、50代の同胞ヘルパーや10、20代の同胞青年の関心を集め、「相手の心を感じる気持ちが大事だと思った」などの感想が寄せられたという。

 「理論や方法を学べば、ボランティアにたずさわる一人一人の思いが利用者にもっと伝わる。どうすれば支え合う関係を築くことができるか。時間をかけて考えていきたい」(呉さん)(張慧純記者)

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