取材ノート
かいま見える変化
6月に平壌を訪問した際、あれっと思ったことがある。売店における店員の態度だ。
1996年に訪れた時でさえ、愛想の悪さにへき易した。客に「買ってもらう」のではなく、こちら側が「売っていただく」といった態度には、正直、不愉快な思いをさせられた。 だが、今回はちょっと様子が違った。店員はむずかしい注文にも嫌な顔ひとつしない。一番驚いたのは、自ら商品をすすめる積極的な対応ぶりだった。 ブレスレットを購入した時のこと。さまざまな種類の物を出してきては、「お客様にはこれが似合いそう」などと一所懸命にすすめる。こちらも「それじゃ」と、必要もないのに2個も、3個も買ってしまった。「おそろいでどうですか」と、指輪まで買わされる始末。 漢方薬の売場では、「ホテルの売店で買うより安いですよ」と呼びとめられた。商売上手になった、というのが率直な感想だった。 それもそのはず。ほどなく朝鮮では給料と物価が急上昇し、働いた分に見合った報酬を得るようになった。サービス産業に携わる人たちも、売った商品の数によって給料が変わってくるのだろう。 これまでは、働いても働かずとも得るものは同じ。それならばさぼりながら適当にやろう―と思うのが人間の性か。だからこそ、働けば働くほど見返りが大きいとなれば、みな必死になるのも道理だ。 9月中旬に訪北した朴在圭元統一部長官は、「デパートの店員などサービス産業に携わる人が、1つでも多くの商品を売るため必死になっているのが印象的だった。似たような商品を店員が競って売ろうとする姿は今回初めて見た」(週刊誌「ハンギョレ21」10日号)と語っている。 北の人々の意識の変化がこんな所にもうかがえる。それは、最近の一連の動きを見る物差しにもなるのでは。(聖) |