閑話休題
「強盗の論理」
歴史も恥も知らぬ作家
産経新聞10月17日付のコラム「正論」に作家の三浦朱門氏の暴論が載っている。日本がかつて行った「強制連行」自体を否定する醜悪な一文である。
「台湾、朝鮮半島の出身者は当時は日本人であった」「植民地には近代産業はなく、いわゆる内地に連れていかれただろう。その職場は炭鉱やダム建設などの厳しい危険な職場であったことも想像に難くない」「しかし、彼らの同年代の内地出身の若者は軍隊に徴用されて戦った。炭鉱と戦場とどちらが危険で過酷な場であろう」というあまりにも逆立ちした妄言の数々。 「強盗の論理」というのはこんなことを言うのであろう。この信じがたい悪罵が、過酷な侵略を受けた朝鮮民族全体に投げかけられているのだ。歴史も恥も知らぬ三浦氏の言葉に憤激を覚えぬ人がいるだろうか。かつて朝鮮総督府の初代総督寺内正毅は「朝鮮人は服従するかさもなくば死を」と述べた。その統治法は36年間一貫していた。血ぬられた野蛮な支配によって他民族を圧迫した側の人間として、三浦氏の発言は無神経極まりない。被害者であるわが父、わが母たちの怒りは、いかばかりであろう。 この作家、ちよっと前まで、政府の教育課程審議会長だった。そこでもこんな意見を開陳しているのだ。「戦後はできんやつのために手間と暇をかけすぎた。できん者はできんままで結構。…無才、非才には、ただ実直な精神だけを養ってもらえばいいんだ」(斎藤貴男著「機会不平等」)。 他民族を蹂躙した自覚のない者の傲慢さが、ここでも露骨である。(粉) |