どうなる? 他の外国人学校

文部科学省、インターナショナルスクールに高校、大学受験資格
新たな差別生む恐れ


 文部科学省がインターナショナルスクール出身者に高校および大学への受験資格を付与することを決めた。今回の決定は外国人学校に高校・大学受験の門戸を開く初のケースとなる。しかし、その対象を「インターナショナルスクール」に制限したことで、他の外国人学校からは新たな差別が持ち込まれる、と憂慮の声が上がっている。

「最終決定ではない」

 決定は、「規制改革推進3ヵ年計画」(3月29日に閣議決定)のなかで発表された。「インターナショナルスクールにおいて一定水準の教育を受けて卒業した生徒が希望する場合には、わが国の大学や高等学校に入学する機会を拡大する」とある。今年度中に措置を講じる。具体的には、大学入学資格検定試験(大検)を免除して大学受験を認めたり、中学卒業程度認定試験の受験資格を与えて高校受験に道を開くという。

 文科省は、「どのような形で受験資格を拡大するか。他の外国人学校をどうするのかも含めて検討中」(大学課法規係)として、最終的な決定ではないとしているが、現時点でインターナショナルスクール以外の外国人学校は対象に含まれていない。

 朝鮮学校をはじめとする外国人学校は日本の学校教育法上、正規の学校として認められていないため、大学受験資格が与えられていない。よって外国人学校出身者が大学を受験する場合、大検を受けたり、日本の高等学校への編入や入学が認められている地域で高卒の資格を取得せざるをえない。262校の公私立大学が独自の判断で外国人学校卒業生の受験資格を認めているが、国立大学は文科省の立場を踏襲し、認めていない。

インターとは?

 日本各地にある外国人学校は最多の朝鮮学校をはじめ、ブラジル、インターナショナル、韓国、中華、ドイツ、ノルウェーなど。「全国学校総覧2002年度版〈私立編〉」によると、インターナショナルスクール、国際学校と名のつく学校は十数校で各種学校の認可を受けているが、要覧に掲載されているほかにも株式会社、有限会社、個人が運営主体のいわゆる「無認可校」が存在する。

 文科省にインターナショナルスクールの一覧を求めたところ、ドイツ人学校やアメリカンスクールも含まれたものが送られてきたが、「明確な定義がない」(国際課)からだ。

 このたびの決定は、日本政府の総合規制改革会議(議長=宮内義彦・オリックス会長)が昨年12月にまとめた答申がたたき台になっているが、答申にはインターナショナルスクールに門戸を開放する必要性が次のように述べられている。

 「近年、外国からの対日投資の増加などに伴い、わが国に中・長期的に滞在する外国人が増えてきており、これら外国人子女の多くがインターナショナルスクールに通っている。教育の国際化の観点からも、わが国の学校制度との整合性を勘案しつつ…大学や高等学校に入学する機会を拡大すべきである」

 外国人学校としての存在意義が認められるのは、「対日投資」に関係することなのか。外国人学校を差別化する決定が実行されるとなれば、これは新たな差別以外の何物でもない。(張慧純記者)

理論上矛盾生じる

張建國・東京中華学校副理事長

 文科省の発表では、インターナショナルスクールの定義がはっきりしない。何をもってインターナショナルスクールとするのか。欧米系の国際学校だけが対象で、アジア系の中華学校や朝鮮・韓国学校は該当しないのか。疑問が湧く。

 対日投資を促進する短期滞在者を念頭に置いたものだと聞いているが、日本に住み続ける外国人の子どもはだめなのか。本校には定住する子も、短期滞在者の子どももいる。「インターのみ」となれば理論上矛盾が生じるのは明らか。ましてや本校の場合、小学生の7割は日本国籍者。このことからも、外国人学校の受験資格問題は単に外国人だけの問題ではない。公平・平等の立場ですべての外国人学校に門戸を開放するのが筋だ。

政治で制限悲しい

松本三朗・西町インターナショナルスクール代表

 インターナショナルスクール卒業生の受験機会が拡大されるとの報道を見て喜んでいる。しかし、同時に朝鮮学校、中華学校などが排除されるということを残念に思う。政治によって子どもたちの可能性や将来が制限されるのはまったく悲しいことだ。ましてや子どもの国籍は子ども自身の価値と何の関係もない。

 インターナショナルスクールや民族学校のそれぞれの特質に合わせた法律的な枠組みを作り、日本の社会の中に位置付けることが一番望ましいと考える。現在は、十把一からげに各種学校としているので、色々現実に合わない点が出ているのだと思う。今回の決定はそれに向けての第一歩であると思いたい。

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