春・夏・秋・冬

 「死ぬ日まで空を仰ぎ、一点の恥辱(はじ)なきことを」(「序詞」より)とうたった詩人尹東柱。日本の植民地支配下で朝鮮語が弾圧され名前も奪われた中、彼は密かに朝鮮語で詩を書き続けた。同志社大学留学中の1943年、特高警察に逮捕され、翌年治安維持法違反で懲役2年を宣告され、福岡刑務所で獄死した。死因は「生体実験」との疑惑が指摘されている

▼45年2月16日、彼は27年の短い生涯を閉じた。わずか半年後、待ちに待った朝鮮の解放が訪れている。母国語を愛し、詩を書き、独立を願っただけの「罪」で不遇の死を遂げた朝鮮の若者。しかし、彼の詩は友人の手で地中に埋められ守られた。「空と風と星と詩」と題して解放後の48年に出版された詩集は、いまなお朝鮮半島の人々に広く読み継がれている

▼先日都内で開かれた勉強会で講演した、作家で東京経済大学教員の徐京植さんは、尹東柱の生涯と彼の詩を例に、日本の植民地支配について語った。そしてこう強調した。「植民地支配、過去の清算を記号で終わらせないで。その時代に生きた人々のことを想像してほしい」

▼朝・日平壌宣言には、「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大な損害と苦痛を与えた歴史的事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からの謝罪の意を表明した」と明記された

▼「多大な損害と苦痛」とは、例えば尹東柱のように詩を書く自由すら奪われたことも含まれる。今なおその苦痛は癒されてはいない。(聖)

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