平壌宣言の精神に沿って信頼、友好に向け過去清算を
東京で強制連行真相調査団全国交流集会
朝鮮人強制連行真相調査団全国交流集会が10月28日、東京・千代田区の中央大学駿河台記念館で行われた。9月17日の朝・日首脳会談を通じて平壌宣言が発表された後だけに、過去の清算問題に対する関心はいつにも増して高まっている。この日も190人を超える聴衆が詰めかけた。集会は3部構成で、1部では最新の調査報告がなされ、2部では「平壌宣言の意義と課題」について荒井信一・茨城大学名誉教授が講演した。3部では、朝鮮にたびたび足を運び戦争被害者から直接取材しているフォトジャーナリストの伊藤孝司さんが講演した。会場には、日本政府が非公開としている40万人分の強制連行者の名簿も公開された。
今朝入手した名簿
1部では、朝鮮人強制連行真相調査団朝鮮人側中央本部の洪祥進事務局長、大阪府朝鮮人強制連行真相調査団の塚崎昌之さんらが、最近明らかになった事実についてそれぞれ報告した。 洪事務局長の報告は、第2次世界大戦中に日本陸海軍に連行された朝鮮人軍人軍属に対する未払い賃金が日本の国庫に供託されたことを示す具体的な資料が発見されたとの内容。供託人員は陸海軍、復員兵、死亡者を合わせて8万9588人。彼らへの未払い賃金額は9131万円(当時)で、現在の金額に換算すると約109億円に上るという。
塚崎さんは、戦争末期に「農耕隊」という形で強制連行が行われた点について報告。そのほとんどが朝鮮半島北部出身者であると指摘した。塚崎さんは冒頭、南の「日帝強占下強制動員被害真相糾明等に関する特別法制定推進委調査研究室」の鄭恵瓊室長の協力を得て今朝(10月28日)入手したという強制連行者の名簿について説明した。この名簿にも、北部出身者が多く名を連ねている。 今回の集会には、「農耕隊」として愛知県に連行された金致隣さん(78歳、平安南道)も来日して証言する予定だったが、中止された。塚崎さんは「直接話を聞きたかった」としながら、金さんの証言内容を紹介。「豚小屋のような汚い部屋に入れられ、朝から晩まで働かされた。…仕事があまりに辛かったので逃走して、捕まった3人は銃殺された」。 「銃殺」について、「軍はこれが可能だった」と解説した。 1部では、神奈川、千葉、埼玉の関東3県から各地の調査に関する報告がなされた。埼玉の報告(調査団の石田貞さん)では、総聯と民団が協力して在日1世9人の証言を収集している活動が紹介された。強制連行の実態だけでなく、当時の生活状況がよくわかることから、調査団側では今後も続けていくという。 神戸集会に向けて 2部では、茨城大学の荒井信一名誉教授が「平壌宣言の意義と課題」と題して講演。1965年の日韓条約では、「過去の清算」の言葉もなく、日本は謝罪せず、植民地支配の有効、無効については双方が別々の解釈を留保して調印したことに比べれば、「過去の清算」を明記したことは前進があった、との見解を示した。 謝罪については、「村山談話を踏襲したものであったが、『過去の植民地支配』『朝鮮の人々』の言葉を加えることで朝鮮に特定したものとなった」としながら、「謝罪についての国家間の政治的決着としては、ぎりぎりの到達点であろう」と指摘した。 3部では、フォトジャーナリストの伊藤孝司さんが、スライドを交えて講演。長年にわたって朝鮮北部各地を訪れ、戦争被害者から直接証言を得てきた経験に基づいた講演だけに、参加者は衝撃を受けていた。とくに、咸鏡北道清津、羅南で発見された「慰安所」、元「従軍慰安婦」や強制連行体験者の話がスライドとともに紹介された。スライドに写し出される元「慰安婦」ハルモニのむごい姿に思わず目を背ける人もいた。 伊藤さんは、日本人拉致問題を想起させながら、日本と朝鮮の両政府が、共に「過去の清算」を行うべきだと提言。日本は「朝鮮に誠意を持って過去の清算をすることで、日本がかつて侵略したアジア諸国との信頼、友好を築くことにもなる」と結んだ。 この日の集会は、10月19〜20日に予定していた「朝鮮人強制連行真相調査団第7回全国交流集会in神戸」が来年度に延期されたことから、現時点での最先端の調査研究を公表し、神戸集会に向けて全国的な調査に拡大するための開催となった。集会の最後には、「神戸集会を必ず開催し、その場で研究、報告してほしい」とのアプローチがあった。(文聖姫記者) |