春・夏・秋・冬

 東京経済大学教授の藤澤房俊さんにお会いしたのは今年の夏。都内で開かれた集会で講演を聞いた時だ。朝鮮の子どもたちに暖かい冬を過ごしてもらおうと、「ラブ・アンド・ピース」というNGO(非政府組織)を立ち上げて太陽光と水力発電の支援を行っているという内容だった。すてきな話だと思い早速取材をお願いしたところ、快く応じてくださった

▼エネルギー支援を始めたのは1999年からだ。その前から食糧や書籍などを贈り続けてきた。淡々と話されるのだが、国交のない国どうし。人に言えない苦労も多々あったと思う。発電機などに要するばく大な資金は、心ある人々からの募金と私費でまかなってきた

▼真冬ともなると零下20度にもなる朝鮮。そんな厳寒の地で暮らす子どもたちに少しでも暖かい冬を過ごさせて上げたい―思いはその一点に尽きる。そのような支援活動だからこそ、朝鮮の人々との「人間対人間の関係」を築いてこられたのだろう。「ラブ・アンド・ピース」の名のとおり、藤澤さんは「人間愛」に満ちた人だった

▼その藤澤さんが書いた文章が東京新聞5日付に掲載されている。「人間の生命をなによりも重視する立場に立つ者として」、日本人拉致被害者に思いを寄せる。そして日本軍に両親を殺された70歳近い朝鮮の高官と会った話も述べている

▼藤澤さんはこう結んでいる。「お互いの悲しみ・怒り・苦しみを、想像力をもって理解し合いながら、和解と共生の道を探らねばならない。悲しみと怒りを克服して国交の樹立を目指すよう訴えたい」(聖)

日本語版TOPページ