2002年度焼肉店経営集中講座(第1回講座)
心機一転新たな挑戦
本紙既報のように10月23、24の両日にかけて、2002年度焼肉店経営集中講座の第1回講座が東京・上野の朝鮮商工会館で行われた。今年のメインテーマは「心機一転! 朝鮮料理店の新たな挑戦〜START ALL OVER AGAIN〜」。第1回講座では、「問われる経営手腕」をテーマに有名講師の講演や飲食業界で活躍する社長らの経験談、グループ別店舗見学会などが行われた。講座には北は青森から南は高知までのおよそ50人が参加。第2回講座は11月19、20の両日、朝鮮商工会館で行われる。(李松鶴記者)
テーマ 「問われる経営手腕」―講演から 広大なロマンと明確なビジョン―清水均氏 「ここでみなさんが得たものはあくまで『きっかけ』です。それをどこまで継続できるかということが大事なんです。成功の秘訣は1割の資質、1割の運、そして8割の努力です」 潟vロジェクト・ドゥ・ホスピタリティーマネージメント研究所代表取締役の清水均氏は開口一番、このように述べた。 昨年9月に発生したBSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)問題は、今まで地域でどれだけ信頼を得てきたかを計るバロメーターになったと指摘、店の真価を問う良いきっかけになったと述べた。 清水氏は、セオリーを守り努力をすれば成功しやすいのが飲食業だとしながら、経営者の信念、概念、執念が今ほど問われている時代はないことを強調した。そのうえで、他店と同じ土俵で相撲をとる「差別化」ではなく、他店との違いを明らかにする「区別化」こそが決め手になると述べた。同時に、「地域化・個店化・個客化」が基本戦略であり、経営者は少なくとも5年後の「あるべき姿」を明確にすることが大切だと話した。 また、これらを基礎に人材育成システムと経営管理システムを構築するとともに、他店との店舗比較の進め方、自店での生かし方、定点観察とトレンド観察の重要性など他店から経営戦略や戦術を学び取るポイントについて話した。 清水氏は最後に、経営者は朝鮮料理店のリーダーとしての「広大なロマンと明確なビジョン」を持つべきだとしながら、企業の規模は経営者の「器と能力」で決まること、部下の夢を明確にし「人財」として育成すること、企業文化としての「育成の場の提供」と「自己啓発の土壌」を築くことの大切さを強調した。(潟vロジェクト・ドゥ・ホスピタリティーマネージメント研究所代表取締役) 「繁盛店作る」共通認識―東條伸一氏
「繁盛店づくりの秘訣は現場にあり〜部下を『やる気』にさせる方法とは?〜」とのタイトルで行われる予定だった東條経営研究所所長の東條伸一氏の講演は、現在の不況を反映して「未曾有のデフレ経済緊急対策〜今、しなければならないこと〜」に変更となった。 6月以降の異変として、東條氏は@外食をしなくなったA客単価の高い店ほど厳しいB特徴のある店、個性のある店しか繁盛していない―などをあげながら、いかにして生き残るかについて述べた。 「一言で言うと、お客様から見て『努力しているな、この店』と思わせるものがないといけない」と話す東條氏は、メニュー価格の全面的な見直し、目玉作り、日替わりのすすめ、店頭での目立つ表示などを例としてあげた。またお客様をワクワクさせる販売促進や、営業経費の節減などの具体的な方法についても触れた。 東條氏は次に、「繁盛店という結果はすべての従業員・スタッフの努力の賜物である」としながら、人材育成の重要性を強調した。 従業員・スタッフがどういう心構えで仕事をしているかを常に把握するためには、徹底した評価制度を設け、コミュニケーションと教育訓練に力を入れなければならず、評価表や朝礼、ミーティングの運営法などコミュニケーションに有益なマニュアルについて説明した。 まとめとして東條氏は、より良い職場の雰囲気や環境を作る努力をどれだけするかによって差は生まれてくるとしながら、従業員・スタッフが「ビジネスは戦いであり、勝ち負けがある」という共通した認識を持ち、「繁盛店を作る」という目標に向かって進んでいくことが大切だと語った。(東條経営研究所所長) 店舗見学会 経営上の悩みも率直に学ぶ点、気づいた点を意見交換 「これなら原価は安いだろうね」。店舗見学会で23日訪れた東京・六本木の豚肉料理専門店では、参加者たちが活発に意見を交換した。
「大きな看板もないし、地下にあるからちょっとした隠れ家。六本木ではこういう店がウケるのか」「これで400円はちょっと高い。これで何人前になるんだろう。でも料理の演出はうまい」と内装や料理、従業員の働きぶりにまで目を配る。料理が運ばれてくるたびに従業員に具体的な説明を求め、みんなで味見をしながら議論を交わす。 店舗に関する意見を交わしながら、参加者らの話は自然と自店での経験交換の場となっていく。 キムチはどこから仕入れているのか、あるいは作っているのか、特別な販売促進をやっているのか、新メニューの開発にはどれだけ力を注いでいるのかなど、参加者たちの話は尽きることがない。 見学会が終わり、商工会館に戻った参加者らは、グループ別に意見交換会を開いた。 「まず入り口にインパクトがあった。それに今までにないような料理の数々にちょっとびっくりした」「豚肉専門店が東京でできるのかと思っていたが、雰囲気と珍しさが繁盛の秘密ではないのか」など良かった点、学ぶべき点を挙げていく。一方で、「忙しかったのもあるだろうが、接客の態度があまりよくなかった」「皿の置き方がアンバランスで食べるのが不便だった」など、それぞれが気付いた点についても真剣に話し合われた。 叙々苑社長の朴泰道氏は、「30代から40代をターゲットにしたまさに現代風の店。朝鮮料理風のものもあったが、あれは日本料理が朝鮮料理を真似たもので、本当の朝鮮料理ではない」と指摘、「しかし見習うべき点も多く、それはそれで素直に見習うべきだ」と述べた。 意見交換会でもやはり、自店での経営上の悩みが話し合われた。「車のお客様がほとんどなので、アルコールに代わるメニューを開発したいのだが」(福井・宋博彦さん)、「平日と週末の売上格差をどのように埋めているのか」(大阪・趙悠徹さん)などの質問に対し、それぞれが行ってきた対処法を披露した。 閉講式で、同胞飲食業者協議会の李致鎬氏は多くを学んだとしながら、経営管理のレベルアップ、焼肉を売っているというプライド、親ぼくと交流、ネットワークのさらなる発展を望む、と第1回講座を締めくくった。 話題の経営者が語る経験談 従来とは異なるアプローチで発想の転換と行動力 「今、話題の経営者に学ぶ」と題して2日目に行われた講演には、「紅虎餃子房」をはじめとするチャイニーズ料理やさまざまなタイプのレストラン&バーを全国展開している際コーポレーション椛纒\の中島武氏と、東京品川の青物横丁で長年焼肉店を営んできた翌ィもに(OMONIα)代表の権東品氏が出演。
飲食業に一切携わってこなかった中島氏だが、「不動産やディーラー、ファイナンスなど在日朝鮮、中国の人たちがやることはもうかるのではないか、ただ日本人がやっていないだけでは」との考えからこの業界に入ったと述べた。そして、チャイニーズレストランを出店するまでの経緯について言及しながら、従業員とのコラボレーションの大切さを強調した。 「牛角と際の成功要因には共通点がある。それは、従来のものとはまったく違ったアプローチをしたからだ」としながら、「在日の焼肉店にありがちな、『お金をかけるのが一番』『金ピカに飾り立てるのが一番』という発想は変えなければいけません」と手厳しい指摘も。 中島氏は、日本には「わびさびの文化」があり、市場のニーズに合ったもの、つまり「食べて気持ちのいい空間」を作り出す努力をすべきだと述べた。 「私は環境が人を作ると考えているので、常にニュートラルな状態を保てるようある一定の業界、社会にだけいないように努力している」としながら、もっと既定概念にとらわれない自由な発想をするべきだと語った。 最後に、経営者と社員との距離は短く、厳しくしながらも仕事を大胆に任せることが大切であると強調。「厳しい中でも抜けていく人は抜ける。人と同じことをしていてはダメ。まずは自己否定から始めましょう」と締めくくった。 一方の権氏は「とにかく具体的に行動を起こしてみること」を強調した。 これまで培ってきた販売促進の方法について述べながら、「みなさんがいけないのは、聞いても行動しないこと。断言しますが、動けばそれなりの結果が必ず見えてくる」と自らの経験を振り返った。 権氏はこれまで、駅前でのティッシュ配布や会社訪問、ファクスによる宣伝などさまざまなスタイルの販売促進をしてきたと述べながら、最近始めた販売促進法についても紹介した。権氏は、焼肉だけを売るのではなく姿勢も売るという考え方が必要だと話した。 「現在、飲酒運転の罰則強化でアルコールの売り上げがかなり落ちているが、今後は例えばO―157で刺身類が駄目になったときのことまで考えなければならない」としながら、他業種も含めていま売れている即効性のある商品を開発する必要性を説いた。 また、メンバーズカードをはじめとする他業種との提携に関する経験談を語りながら、地域に密着することの大切さを訴えた。 |