春・夏・秋・冬

 イラクに対する国連と国際原子力機関(IAEA)の査察が始まる。イラクはすでに、対象すべてへの立ち入り、査察の容認を公式表明しているが、奇妙なことに、耳に届いてくるのは「戦争」という勇ましい掛け声ばかりだ。掛け声の発信者はいうまでもなく米国。ブッシュ大統領はいう、「イラクは危険だ、フセインは抹殺しなければならない」と

▼これでは、査察の結果いかんにかかわらず、「結論ありき」の暴論ではないか、という声も聞かれるが、米国がそれに耳を貸す気配はまったくない。自省を込めて、いつか来た道とよくいう。米国にしてみれば余りにも頻繁に使いすぎた日常的な手法だけに、その目的を早くも見抜かれている事に気づかない

▼93年、IAEAは米国が騒いだ核開発疑惑にせかされて、6回の査察を朝鮮に対して行った。チームの責任者は今回もその職にあるブリクス。結果は「疑惑なし」のシロだった。この結論に米国が噛みついた。衛星写真を持ち出して「開発は確実だ」と。慌てたブリクスは前言を翻して、IAEAが求める全対象への無差別査察を要求してきた。94年春の戦争危機の発端だった

▼ブッシュ政権の「あくまで戦争」の姿勢は、朝鮮で取ったのと同じ手法を持ち出してくる事を示唆するものだ

▼ブッシュ政権は朝鮮を「悪の枢軸」と呼ぶが、朝鮮にすれば米国こそ「悪の権現」。その尻馬に乗って、意気揚々と好戦論を吐く者たちも日本社会では日に日に目につく。戦争がどういう状況をもたらすのか、認識がないから性質がさらに悪い。(彦)

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