和解、団合の現場-北から南から-
民族の利益と平和の観点
南社会の現状
核問題に呻吟
8日間のソウル滞在中、多くの人たちと会いさまざまな話を交わすことが出来た。 話の内容は当然、6.15共同宣言、つまり民族同士、力を合わせて共存共栄を遂げ、民族統一を実現する問題に集中した。 しかし、その一方でケリー米大統領特使(国務次官補)の訪朝を機に、米国が持ち出してきた北の核開発問題が暗い影を投げかけていた。とくにマスコミ関係者たちは、その実相がどうなのか、米国からもたらされる洪水のような情報の下で、どのように判断すれば良いのか、呻吟していた。 時折しも、来月の大統領選挙を控え南の政局は混沌、混迷を深めていた。この問題が6.15宣言によって切り開かれた北南和解、協力・交流の前途に、また悪影響を与えるのではないかと、心配する向きが多かった。 毎年のプログラム
こうしたなか、取材団の会見要請に快く応じてくれた民主党の李昌馥議員は、国会議員会館の事務室で次のように語った。 「2000年の金大中大統領と金正日国防委員長による南北トップ会談、そして6.15宣言の発表は南と北が和解、協力・交流を促進していくための決定的な契機になった。この2年間、とくに民間統一運動はこれまでになく活発化した。8.15祝祭、女性、青年たちの交流、これらは毎年のプログラムとして組み込まれ継続している。この1つの事例を見ても、南の社会が大きく変化したことがわかる」 李議員は、「民主主義民族統一全国連合」常任議長を8年間勤めた後、2000年4月の国会議員選挙で江原道・原州から出馬、当選した。長く弾圧、統制の対象とされてきた在野活動を経ての国政への参加だ。 李議員の「南の社会は変化した」という指摘は、自身が国会議員として存在しているという事実、そのことによっても理解出来る。 沈黙する保守勢力 李議員は続ける。 「長く分断されていた南と北の差を縮めるには、何よりも互いに会う事が一番重要だ。会って話をして理解がいけば、分断によってもたらされた南と北の距離は確実に狭まり、結果として将来的にはなくなっていく。そうなれば軍事的な問題、そして今回の核問題のような非常に敏感な内容を含む問題も南は南、北は北という壁を崩して、民族の利益、朝鮮半島全体の平和という観点から解決していこうということになる」 その一方で、南の社会全体は大きく変化したとはいうものの、保守勢力の存在は無視できないともいう。「今、保守勢力の多くは沈黙している。彼らがひとたび行動を始めると過激だ。無視してはならない」。 6.15宣言によって始まった民族和解、協力・交流の南と北の新しい歩み。そして保守勢力の存在。「生みの苦しみというが、新しいものと古いものとが社会全体に混在している」(金基憲・「民族21」誌記者)、というのが南の現状ではないかと思った。 成果固める作業を だが、「もう、今の流れはどのような力によっても止められない。だから、瞬間の現象によって全体を判断したり、動揺してはならない。民族のために共に頭を悩まし、統一のために考えを巡らしていかなければならない」と李議員が指摘するように、南も北も同じ民族なのだという認識は、確実にこの社会に根付いているように感じた。 この連載の1回目で紹介した江原道の対北協力・交流事業を進める鄭聖憲さんも、「民族の問題を政治の次元で見てはならないし語ってもならない。かつての時代に逆戻りする。内部統一、民族統一を成し遂げることが今の最優先の課題だ」と強調していた。 「6.15宣言後の成果を崩されないように、それを南北双方が堅く固めていく作業が必要だ」(李議員)。今、在日同胞にも提起されている課題だろう。(終わり=本社取材団) |