月間平壌レポート 2002.11
緊張の中でも北南和解の雰囲気
米日を非難、南には民族団結呼びかけ
【平壌発=姜イルク記者】「大国は小国をいくら威嚇してもかまわないが、小国はその威嚇に対応しようとしてはならないというのは、全くの米国式超大国主義の強盗論法である。この論法がほかでは通じるとしても朝鮮半島で通じると思うなら、誤算である」。
米国がKEDOをもって重油提供中断したのを受け、朝鮮外務省スポークスマンは21日談話を発表。談話全文は、労働新聞の国内政治を扱う2面に掲載された。この種の談話が2面に掲載されるのは異例なこと。 11月中旬から朝鮮のマスコミは、連日特集を組み、強い調子で米国を非難している。一方、米帝の大虐殺があった信川博物館や祖国解放勝利記念館には、大勢の人民が訪れ、反米感情をあらわにしている。 米国の出方に対する市民の見方は、「相手方が絶対のめないような要求を迫っては、それを受け入れないのを口実に圧力を加えようとするのが米国の常套手段」で、「しかし圧力は朝鮮人民には通用しない」、というものだった。 朝鮮の主張は一貫している。先不可侵条約締結だ。真に問題解決を望むなら、条約を結べない理由はない、条約を結ばないのはほかに目的があるからだ、と警戒を強めている。 「圧力に屈する人民ではない」
朝鮮では反米気運が高まる中、電力増産と節約を全人民に呼びかけている。 朝鮮の各紙は、「電力節約運動を力強く」(23日付労働新聞)、「中小型発電所建設と運営で実利を徹底的に追求しよう」(17日付平壌新聞)などの大見出しの下に、連日1面に関連記事を掲載している。また朝鮮中央テレビは、「電力増産と電気節約運動を力強く推し進めよう」(16日)というタイトルのプロを放映している。 朝鮮のエネルギー専門家の説明によると、朝鮮のエネルギー政策の基本は自給自足で、朝鮮の発電施設は水力発電を基本にし、また火力発電所も朝鮮に無尽蔵の無煙炭を使用。 重油は着火時とボイラーの温度調節に必要であり、あくまでも補完に使用される。事実、重油提供のなかった94年以前も電力問題を自力で解決してきた。 彼は、「火力発電問題は、無煙炭の質を向上させ発熱量を上げれば解決できる。重油提供の急な中断で多少の影響はあるので、増産と節約が必然」と説明しながら、「米国はわれわれとの約束を一方的に破っている。それが大きく世論に公開される2003年を前に、責任を朝鮮に転嫁しようとしている」と話していた。そして朝鮮人民は圧力に屈する人民ではないと強調していた。 反米キャンペーンを促している各紙は、一方で、11月に入り早々と年間計画を達成した工場・企業所のたよりでにぎわっている。 ある対話関係者は、「われわれは一貫して朝鮮半島の平和と繁栄に努めている。戦争の前夜まで平和的建設はすすめるだろう。しかし自尊心を曲げてまで平和は望まない。対話と戦争のどちらも準備はできている」と話していた。 「全民族が団結しよう」 最近、テレビでは引き続き釜山アジア大会をにぎわせた「美女応援団」などの番組が放映されていた。 最近の朝鮮のマスコミのもうひとつの特徴は、北南和解の雰囲気を高揚させていることを挙げられる。 朝鮮は米国と日本に対して強く非難する一方で、南に対しては、「わが民族同士」をキャッチフレーズに民族の団結を、再三呼びかけている。 北南対話関係者は、統一に向かう時代の流れは、どんなことがあっても引き戻す事ができないと強調していた。事実、米国が北南鉄道・道路連結を妨害しようとしているが、進展を見せている。 「力を合わせ、全民族に素晴らしいプレゼントを作り上げましょう」 去る8月から北南間の交流・対話が急速に発展する中、対話に臨む北南代表らも、合意書をまとめ上げるための努力がありありとうかがえた。たとえば、経済協力推進委員会の分課別会談は早朝6時まで、第8回閣僚級会談は真夜中の3時まで、双方が知恵を搾りあい、共同報道文をまとめあげた。 会談の合間に一緒に平壌市内を観光する北南の代表らは、常に笑顔を浮かべていた。敵対心をもって臨んだ、国交正常化のための朝・日政府間会談とは、大違いだった。同族の温かさが感じ取られ、また、ひとつになろうとする強い意志が見うけられた。 余談になるが、「万景峰92」号は、新潟に入港(25日)した際はバッシングを浴びたが、釜山では市民の大歓迎を受けていた。対米・対日関係とは対照的に、北南間では、着実に和解と団結がすすんでいるといえる。 朝鮮半島をめぐる情勢は依然と厳しい。が、市民の間では統一への熱望を込め「われらはひとつ」が、幅広く、そして楽観的にうたわれている。 「南でもよくうたわれていますよ」。誇らしげに語る大学生の満面に、笑顔が浮かんでいた。 |