高齢者除外、反省の視点なし

無年金障害者ら「坂口試案」の問題点指摘、厚生労働省に要望書


 「年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会」(李幸宏代表)は11月26日、無年金状態に置かれている外国人高齢者・障害者の救済を求める坂口力・厚生労働大臣あての要望書を提出。愼英弘・花園大学助教授、滋賀の金太一さん、愛知の鄭秀永さんら無年金を強いられている各地の同胞や支援者が衆議院第二議員会館に集まった。

 今年に入って坂口力大臣は、無年金者を一括救済する試案を発表したが、関係者の間では不十分との声が上がっている。

 同連絡会は要望書で試案の問題点を指摘。@国籍条項により、年金制度から排除されていた在日外国人高齢者・障害者は、年金制度に加入できたが政策的移行期であったために無年金状態が発生した学生・主婦とは問題が異なるA外国人無年金高齢者問題が対象外となっている―点をあげた。

 そして、問題の解決案として無年金者を類型化することを提案。年金に加入できた無年金障害者と制度的に無年金となった外国人無年金者を類型化し、外国人無年金者には障害者は障害基礎年金額相当、高齢者は老齢福祉年金額相当を支給するよう提案した。

 厚生労働省からは、原口順一・年金局年金課企画法令第1係長らが対応。来年度の初めに実態調査を始めるなどの返答があったという。

 続いて、参議院議員会館で国会議員との懇親会が行われた。現在国会では、「無年金障害者問題を考える議員連盟」結成の準備が進められており、発起人で衆院議員の中川智子(社民)、金田誠一(民主)、武山ゆり子(自由)の各氏らが参加した。

 金太一さんは、「なぜわれわれだけが差別的な待遇を受けなければならないのか、がまんならない。不条理で恥ずかしいこの差別をあなたたち国会議員は是正する義務がある」と強く訴えた。

 中川議員は、「過去の交渉に比べると、坂口試案が出たことで多少空気が変わってきた感じはある。これからが正念場。当たり前のことを言い続けている当事者の願いを実現するため、国のあり方を追及していきたい」と決意を述べていた。

 【坂口試案】無年金障害者に年金に代わる福祉金を支給するというもので、支給対象は@82年の国籍条項撤廃前に障害を負った在日外国人(推定5000人)A86年の年金制度改正前に障害を負ったサラリーマンの妻(2万人)B学生の国民年金加入が任意だった91年以前に障害を負った学生(4000人)C国民年金に未加入および保険料を納めていない障害者(9万1000人)。障害の程度は1、2級、福祉金の支給額は障害福祉年金(月額最高8万3000円)の半額程度を支給するという。施設入所者は除外、所得制限を設けていることに加え、無年金高齢者は除外されている。

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