コリアン学生学術フォーラム2002
大学生における性差観と「従軍慰安婦」問題の認識
統一コリア賞―高星愛(聖心女子大学3年)
まず、大学生に「性差」に対する意識調査を行い、保守的な性差観を持つ調査協力者の群と、進歩的な性差観を持つ調査協力者の群を抽出した。次に、それぞれの群において「慰安婦」問題に対する認識について意識調査を行い、2群間の見解の差異を分析した。その結果、「男女間には行動や能力において差はない」と考える進歩的性差観群は保守的性差観群よりも「慰安婦」問題に対する認識レベルが高く、根底に潜む女性問題をより的確に捉えていた。また両群とも「慰安婦」問題の根底には今もなお続く女性差別があると言及していたが、保守的性差観群の中にはその差別の理由として、男女間の本質的な差のゆえ仕方がないとする、家父長制的な意見が見られた。 この結果から、ただ「性による差別はいけないこと」という表面的な認識は個人の性差観を問わず抱くことができるが、進歩的性差観を持つ個人はより強い関心や興味を、女性差別や「慰安婦」問題へ注ぐことができると明らかになった。そしてこのような進歩的な性差観を抱くには、その認識の根底となる「男らしさ」「女らしさ」という思い込みからの脱却が必要不可欠であると言える。 現代社会には、性的凌辱を受けたことは「女の恥」「民族の恥」だという儒教的な道徳観が潜在している。今もなおこの家父長制的な意識が根強いのは、人々が長い間女性差別を保持してきた伝統的社会の価値観から、完全に脱却できていないからである。つまり「慰安婦」問題の背景と現代社会に潜む女性差別の根底は何ら変わっておらず、従って「慰安婦」問題は過去の問題ではなく、現在の問題であると言える。 われわれは「慰安婦」問題をすでに高齢に達した彼女たちの過去の傷跡に留まらず、この問題がこんにちにおける性暴力や女性差別、民族差別と深く結びついていると強く認識する必要がある。家父長的社会に対する問題提起を通して、自らの内にある加害性を問い、抑圧され差別される者の立場から社会を変えて行くことこそが問われているのである。そしてわれわれは植民地支配や「慰安婦」制度という問題を、「意識」「主観」「表象」といった問題に還元しない構造的分析が必要だ。(文学部教育学科心理学専攻) ジェンダーを在日の視点から―高星愛さん 専攻している心理学、とくにジェンダーについて在日の視点から考えてみようと思い、「慰安婦」問題をテーマにした。150人にアンケート用紙を配り96人から回答を得た。準備期間は1カ月ほどしかなかったが、受賞できてうれしい。今回は日本人のみを対象に調査したが、今後は日本人と在日の考え方の違いなども分析してみたい。 審査員講評 「従軍慰安婦」問題が過去の問題ではなく現在進行形の多くの問題を抱えていることを、非常に鋭いタッチで論述した。 日本の朝鮮植民地支配という歴史に目をつぶってはならず、戦後半世紀が過ぎた今もって「慰安婦」にさせられた女性たちに沈黙を強いている女性差別観が存在することを指摘した。文章も良くまとまっていた。(審査委員長の洪南基氏、神奈川大学非常勤講師) |