「民族教育のすばらしさアピールしたかった」
コニカフォト・プレミオに入選した大阪朝高卒、若手写真家の金仁淑さん
大阪朝高出身の若手写真家、金仁淑さん(24)の作品が10日から18日まで、東京・新宿のコニカプラザ・ギャラリーで展示される。北大阪朝鮮初中級学校(附属幼稚班)の子どもたちを撮影した作品は、35歳以下の写真家あるいは写真家を志す個人の作品発表の場であるコニカフォト・プレミオに入選。個展として20作品が展示される。同プレミオは、写真家の長野重一、柳本尚規、秋山亮二の各氏を委員とする選考会が年4回計24人の作品を選出し、年度各賞(大賞1人、特別賞2人)を選んでいる。若手を対象とした個展の開催を奨励しているのはコニカフォト・プレミオのみで、若手の登竜門にもなっている。なお年度賞受賞者および入選者には奨励金も授与される。
大阪朝高、大阪樟蔭女子大学学芸学部被服学科卒業後、手に職を≠ニ思い、家業を手伝うかたわら、写真家を目指し専門学校のビジュアルアーツ大阪・夜間部写真係に入学した。 写真家を思い立ったのは、幼いころから絵を描くことが好きで、色を表す絵と同じく色を表す写真で、自分の潜在力を引き出せたらと思ったからだ。写真に関する知識を学び、さらには物や人の自然な表情、色がそのまま表現される写真を撮る過程で、作品を作り上げる喜びに「ハマッタ」という。3月に卒業した後も、研修生として引き続き専門学校に籍を置くようになった。 今回展示される作品名は「Chang〜窓・唱・蒼〜」。専門学校在学2年間の集大成として、北大阪初中の協力を得て、昨年5月から子どもたちの姿を撮影したもの。使用したカメラはニコンFM2・35ミリF2とリコーGR1V・28ミリF2.8、フイルムはフジカラースペリア400など。 題材に朝鮮学校を選んだのは、「自分のバックボーンをフル活用するとともに、民族教育の素晴らしさをアピールしたかった」からだ。 当初の題名は「日々」だった。自分の子ども時代を思い出しながら、今の子どもたちの日々を愛しくファインダーからのぞいていた。その過程で、窓越しから子どもたちを撮っていることが多く、さらにはその撮影時間が唱のように流れていたこと、現像した写真が若さをアピールする蒼を表現していたことに気付いた。窓、唱、蒼、いずれも朝鮮語でチャンと読むことから、題名を「Chang〜窓・唱・蒼」に変更したという。 入選を知った時は、「本当にうれしかった」とふり返る金さん。とくに、「拉致問題の影響で朝鮮学校の生徒に対する嫌がらせがあるなかで、心配もあったが、逆に在日の子どもたちの純粋な心をアピールし、日本人にも理解を得られるチャンスでは」とも考えた。 個展では、100センチ×75センチの作品20点に、子どもたちの自然な日常生活が映し出される。 「1人でも多くの人に見てもらえれば」と目を輝かせる金さんは、目標に向って階段をひとつずつ上っていく大切さを知っているかのようであった。また金さんの作品は、アサヒカメラ12月号でも取り上げられた。(羅基哲記者) |