日常会話中心、生活に生かす
開講3ヵ月めの「ウリマル(ハングル)教室」(京都・山科)
「ヨボセヨ(もしもし)」「ノム ピサヨ(高すぎます)」「トー カカヂュセヨ(もっとまけてください)」―京都・山科同胞会館で開かれている「ウリマル(ハングル)教室」から受講生たちの声が聞こえてくる。毎週水曜午後7時15分から8時30分まで開かれている同教室では、専門の同胞講師のもと、地域同胞と日本市民が学んでいる。11月下旬、教室を訪ねてみた。
20数人が登録 「ウリマル教室」は、山科同胞生活総合センターをはじめ、地域商工会、朝青、女性同盟の協力で9月に開講した。この地域にはウリマルを知らない同胞が多いこと、そして、同胞会館をこれまで以上に多くの人に活用してもらいたい、という狙いもあった。
運営の都合上、開講は午後7時過ぎと、多少遅めの始まりだが、それでも20人余りが登録、毎回10人前後が参加している。 なかには、日本人の姿も見られる。サッカーW杯や釜山アジア大会など昨今のコリアブーム≠ニともに、授業料が安いというのが大きな理由のようだ。授業料はチケット制で、1回1000円(資料代、コーヒー付)。 一方、同胞参加者はほとんどが日本学校出身で、初めてウリマルを学ぶという人もいる。 講師は、朝鮮大学校文学部卒業後、神戸朝高で7年間教べんをとり、その後8年間、神戸山手女子短期大学でハングルコリア文化の非常勤講師を務めた朴基栄さん(41)。 受講生の年齢層が20代から60代と広範囲に及ぶうえ、毎回参加できない人もいることから、授業は1回ごとに完結するようカリキュラムが組まれている。 また、文法よりも日常会話を中心に進められ、あいさつをはじめ、電話のかけ方や、日本の歌の歌詞をウリマルに訳して歌うなどの工夫もされている。 ユーモアあふれる講師
ちょうど記者が教室を訪れた日は、いま流行っている「大きな古時計」を習っていた。実はこの歌、朝鮮学校でも流行しているとか。「クーディークン キーダリ ピョッシーゲ(大きなのっぽの古時計)」というふうに。懐かしい歌、流行歌からウリマルを学ぶとあって、覚えやすそうだ。 夜間学校でかつて、ウリマルを学んだことのあるという河福順さん(62)は、「文字は読めるけど、会話はほとんどだめ。だからひとつでも多く学び、親せきと母国語で会話をしたい」と受講の動機を語る。 また、聞き取ることも話すこともできないという朱敬子さん(58)は、「ユーモアあふれる講師のおかげでとても覚えやすく、楽しい。習ったウリマルは自宅で夫と復習している」と話す。 平壌、ソウルに行った際、文字が読めず他人に読んでもらうという「悔しい」思いをしだ鉉淑さん(68)。今ではすっかり上達し、北海道に嫁いだ娘とウリマルで手紙をやり取りするまでになった。「楽しみがまたもうひとつ増えた。学ぶ意欲も増している」と笑顔で語る。 子どもたちの教室も なお同会館では、朝青運営の土曜児童教室(第2、第4土曜、月500円でお菓子、ジュース付)と、朝青とその両親(毎週木、金曜)、30代の青年(不定期)を対象としたウリマル教室も開かれている。 「コーピー トゥゲ チュセヨ(コーヒー 2つ ください)」と、商工会事務所を訪ねる受講生の姿も。日常生活でもウリマルが少しずつだが、使われていることをうかがわせた。 民族の言葉と文字を学ぶことによって、薄れがちな在日コリアンの民族性を育てようとの、山科地域の取り組み、今後の成果が期待される。(羅基哲記者) |