ウリハッキョ保健への新たな取り組み(上)
「検診第一主義」から「健康教育関与主義」への転換
あさひ病院 金英宇
11月10日、神戸市で行われた第25回医協学術報告会で、東京・あさひ病院金英宇副院長が「ウリハッキョ保健への新たな取り組み」について朝鮮学校中央保健委員会がまとめた論文を発表した。論文の要旨を2回に分けて掲載する。
今、日本医師会をはじめ各種分野の医学会などで、21世紀に入っての学校保健の展望と学校医のありかたについて、度重なる議論がなされている。 学校保健の発展的見直しは、在日のウリハッキョでも、これと無縁ではないと思うので、その状況報告と提言をする。 1、今までの学校保健管理活動について、振り返って見る。 日本学校での健康問題は、医学の進歩や社会情勢の変化に対応して大きく変貌してきた。 現代の子供たちの健康管理状況を見ると、次の3つのことが言える。 1つは、早期から種々の健診ネットワークにより、健康が保持されていること。次に、疾病や障害のほとんどは、乳幼児期に発見され、対策が講じられていること。3つ目は、主治医によって治療管理がされているということだ。 学齢期の児童生徒の場合、毎年4〜6月に実施されている健康診断を核にして、保健管理がされている。その中で、個々の児童生徒が自分の健康に興味を持つようになり、教員と学父母が児童生徒の心身両面の発育段階をともに確認している。また、健診の中で、児童生徒が生涯にわたって健康管理に必要な慢性的疾患や障害について、将来を見通した指導・支援を行うための資料を得ている。 それとともに、学校での集団的な感染の早期発見とその防止策がとられている。 ウリハッキョにおいても、ウリ医協会員と日本の医療に従事する方々の努力により、内科・眼科・歯科など各種の疾患が早期に発見され、必要な処置が講じられてきた。 このような毎年の粘り強い学校健診の成果は、私たち学校医活動の実績として、大いに誇っていいものだと思う。 2、近年、児童生徒らを取り巻く状況の著しい変化の中で、健康への影響とこれへの対応について見ることにする。 児童生徒の健全な発育・発達にさまざまな影響が出ている。特に肥満や生活習慣病の兆候など、どれを見ても深刻な問題であると言える。 これに対応して、今、学校保健活動での新たな見直しが進められているわけだが、その動向を簡単に見る。 見直しの方向を一言でいうと、「健診第一主義」から「健康教育関与主義」への転換ではないかと言われている。 この主な主張として、次のような点が上げられる。 第一の点として、「従来の健康診断に加えて、健康相談と指導、保健教育の充実にシフトすべき」との主張が増大していることだ。このような主張の具体的な表れの1つとして、「認定学校医制度を早期に導入しよう」との動きが強まっているが、アンケート調査によると、「導入すべきである」という回答は36.1%で、これは5年前の20%に比べ、年ごと増加傾向にある。 第二の点として、いま引き続き行われている日本学校での教育改革の中で、「各種専門家の学校教育への参画」に大きな期待がよせられていることだ。すなわち、「社会人教師制度の導入」という考え方だが、今、各地で実行に移されている。 この反面、さまざまな意見もあるようだ。 その主なものを教師側から挙げると、@学校長ら教育関係者の学校保健への認識が低いことA教師の中に自分ら以外の素人には教育現場を任せられないという姿勢が根強くあること―だ。 また、医師側からの意見を挙げると、@多忙な日常診療に追われている中で、広範な学校医活動をするのは無理との考えがあることA低い経済的処置から学校医活動には限界があると思われていることB学校側からの要請がほとんどない状況が多々あるということ―だ。 ここに挙げた教師側、医師側の意見などは、言い換えれば、そのまま学校保健活動が低調である地域の主な要因となっていると言える。しかし、このような問題点を克服しながら、学校保健活動を新たに見直して、時代の要求にそくしたものに発展させようと、各方面で大きな努力を傾けているわけだ。 |