春・夏・秋・冬

 先週末、編集部に一本の問い合わせの電話がかかって来た。電話の主は、かつて60年代の小田実氏(作家)ではないが、「何でも見てやろう」とばかりに、アルバイトで資金を作っては外国に出掛け見聞を広げているという20代の青年。問い合わせの内容は、朝鮮でのサイクリングツアーの様子をテレビで見たのだが、どうすればそのツアーに参加できるのか、連絡先などを教えてもらえないか、というものだった

▼青年いわく、閉塞状態の今の朝・日関係にあっても、日本人のサイクリング愛好者たちを朝鮮側が受け入れて、交流が行われている事実に驚いたのだという。だから、自分の目で朝鮮という国を確かめ市民たちとも話してみたいと。そして、次のような事を付け加えて話し始めた

▼「ヨーロッパから帰ってきたばかりだが、拉致という問題はあるものの、あちらでは日朝平壌宣言の内容は素晴らしいと、称賛の声しか聞かれなかった。実際、自分も内容を読んで、ようやく両国は新しい一歩を踏み出していくのだと思った。ところが日本に戻ってくると、宣言の事は棚上げにされて拉致報道ばかり。これはおかしい、本筋を見誤ってしまうと思った」

▼そして、「日本も朝鮮半島を植民地支配した過去がある。過去の事にこだわり続けると、前には進まない。両首脳が決心した平壌宣言を具体化することをみんなが考えるべきであり、そのためにはどんどん交流し理解し合う事が必要だと思う」とも

▼短い会話だったが、殺伐とした空気が充満する中、救われたような気持ちになった。(彦)

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