21世紀の同胞社会構築−19全大会課題遂行どう進める?(下)
03年度から新カリキュラムー朝鮮学校
「益柱・総聯中央教育局長
社会作るのは人
―総聯第19回全体大会決定は民族教育問題を大変重要な課題として示したが。 19全大会は、21世紀の在日朝鮮人運動の進路とともに、今後新たに築いていくべき同胞社会像のビジョン◇民族性と同胞愛で結ばれた仲むつまじい同胞社会◇経済的に安定し民族の文化と情緒あふれる豊かな同胞社会◇日本と国際社会で堂々たる地位を占め祖国と民族のために価値ある貢献のできる力ある同胞社会――を示した。社会を作るのは人。人材を育てる民族教育が重要な位置を占めるのは言うまでもない。 同時に総聯としては今後の同胞社会構築において、朝鮮学校を民族文化継承の発信地、団結の拠点としていくビジョンを描いている。同胞社会のいちばん大きな関心事が教育問題であり、過去半世紀の民族教育を通じて10万人以上の卒業生を輩出したことを考えると、民族教育は新世代をはじめとした各界各層同胞のつながりを作っていく要となる。 6.15後の変化 ―朝鮮学校の教育内容、教育方法の改善については。 現在、2003年度からの実施に向けたカリキュラム再編・教科書編さん作業が最終段階で進んでいる。同胞社会のニーズ、子どもたちのおかれた環境と実情、時代に相応しい内容を目指し、1999年から全力で取り組んできた。 カリキュラム再編はほぼ10年ごとに行っているが、今回は、子どもたちが3世はおろか4世へと移行していく中で、民族性をいかに育むかをこれまで以上に重要な課題として掲げているのが特徴だ。この問題を軽視するのはむしろ時代に逆行する。在日同胞にとって民族性の問題は人間がいかに尊厳を守って生きるかという問題だからだ。 まずは国語教育、とくに会話能力の強化に努める。次に朝鮮の歴史、文化、芸術についても幅広い素養が身につくような形で教えていく。授業はもちろん課外活動やクラブ活動でも、楽しみながら自然に民族に触れられるような工夫を凝らしていくつもりだ。 また今回、社会科目の各教科をこれまで以上に在日同胞の過去、現在を知り、未来を考えさせる内容にしようと大幅に手直ししている。子どもたちが自己の存在を見つめ、いかに生きるか考えるためには自らのルーツをよく知る必要がある。そうしてこそ社会に関心を持ち、同胞社会の一員としての自覚と正しい権利意識を持てるようになる。 また一昨年の6.15共同宣言以降、大きく変わった北南関係を背景に南朝鮮の政治、経済、社会、文化についてより幅広く扱い、祖国統一の展望についてもより深く教えていく予定だ。 情報技術(IT)教育の質、量的な強化を図り、ニーズの高い英語教育にもいっそうの力を入れる。 教員の資質向上 ―新カリキュラム導入にともない朝鮮学校でも週5日制が実施されるが。 日本学校では2002年度から新学習指導要領による完全週5日制が始まるが、基礎学力の低下に対する懸念の声が高まっている。 私たちとしては、週5日制実施にあたってこのようなことが絶対にないよう努める。現行のカリキュラムも文部科学省の学習指導要領より到達目標を高く設定しており、今後もその方針を引き継ぐ。週5日制も、日本学校のように毎週ではなく隔週または月に何度かの土曜日は課外授業などの日として有効に活用する方向で、地域ごとのモデル校で試行錯誤を重ねている。 新カリキュラム実施において、教員の資質向上が欠かせない。3、4世の教員が7割を超えた現在、とくに国語能力の向上を図る必要がある。また情報教育を推進するためのコンピューター技術教育も重要だ。 さらに子どもをめぐる状況が複雑な今だからこそ改めて基本に立ち返り、これまで以上に教員が子どもたちを愛し大切にしなくてはならず、そうしてこそ保護者と同胞社会の信頼を得られるのだと強調したい。 また学校を地域同胞社会の団結の拠点としていくためにも、より学校を開放しなくてはならない。地域同胞がさまざまな形でもっと学校施設を利用できるようにし、課外活動などには地域同胞の協力もあおぎたい。 3月までに協議会 ―厳しい経済状況の中で、学校運営は頭の痛い課題だが。 打開に向けてまず、民族教育の権利拡大運動をより強力に展開する。これまでも地域レベルでは保護者、同胞たちが本当にがんばってきた。現在、各地の地方自治体から朝鮮学校に支給されている各種の補助金は年間10億円ほどになる。 しかし根本的な問題は日本政府にある。制度的な差別を抜本的に是正させ、朝鮮学校の安定した法的地位を確保するため、全力をあげて取り組む決意である。現在、総聯中央の関連各局をはじめ関連各団体も含めて具体的な対策を協議中だ。 内外の世論は私たちを支持している。より幅広い世論を味方につけ、ほかの外国人学校や日本市民らとも協力して進めていきたい。 同胞たちの経済状況の厳しさは相変わらずだ。以前のように、大口の寄付に頼っていればいいという時代ではない。これまで以上に地域での学校を愛する運動や支援運動が求められるし、卒業生たちも連携を強めて母校を支えてほしい。オモニ会、アボジ会にも引き続き尽力をお願いしたい。同胞社会全体で学校を支えていこうと強く訴えたい。 またすでに一部で進められている学校配置の見直し、つまり統廃合問題も日程に上っている。ただしこの問題は、運営上の合理化という発想で行ってはいけない。私たちは、あくまでも子どもたちによりよい教育環境を整えるという方向でこの事業を進めており、先行している愛知、兵庫などでは一定の成果もある。 1世が築き残してくれた資産をいかに有効に活用するのか。民族教育の将来を左右する非常に大切な問題だ。同胞たちの意志に依拠しながら長期的展望を持って慎重に進めたい。空いた施設は同胞の福祉や文化活動に有効利用するなど、柔軟な発想も取り入れたい。 19全大会で明らかにした、総聯中央常任委員会の諮問の場としての「民族教育協議会」は、3月までには発足させる。同胞有識者、教育専門家、経済人、各階各層同胞約20人ほどがメンバーとなる予定で準備が進んでいる。 |