国内外で高まる非難の声

ブッシュの「悪の枢軸」発言


 米国のブッシュ大統領が先月29日の一般教書演説の中で、朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」とし、対テロ戦争の対象として視野に入っていると発言した。続く31日には「各国も我々の側につく必要がある」と、9.11テロ事件以後の「敵か味方かの二極論」を持ち出し、「世界の平和と正義を守る」という建前のもと自国の利益追求に奔走している。再び台頭したブッシュ政権のユニラテラリズム(一国主義)に、国際的にはもちろん国内でも批判の声が高まっている。

中・ロ・EUも

 「近来の朝米関係史に、米国大統領が直接政策演説を通じて自主的な主権国家であるわが国にこのように露骨な侵略威嚇をしたことはない。これは事実上われわれに対する宣戦布告に他ならない。…われわれは「対話」と「協商」の仮面さえも脱ぎ捨て情勢を戦争の瀬戸際に追い込んでいる米国の尋常でない動きを注視している」。朝鮮の外務省スポークスマンは31日の声明でこのように述べ、ブッシュのごう慢な態度を厳しく非難した。

 ブッシュの「悪の枢軸」発言は、朝鮮をはじめとする一部の国のみならず世界各国からも反発を招いている。

 31日米国を訪問したドイツのシュレーダー首相は、ブッシュに対し「対テロ戦争」の拡大に憂慮を示し米国の立場に対する説明を要求した。ドイツは以前にも米国がイラクを攻撃することについて反対の意思表明を明らかにしたことがある。

 1日付のファイナンシャルタイムスは、EUは一般教書演説後もイランとの対話を中断する意志はまったくないとしながら、EUのある高官が「ブッシュ大統領は自分の思うとおりに言う事ができるしわれわれは彼の言葉に耳を傾けるが、われわれはイランとイラクに対する米政府の封鎖政策が現在の状況を招いたということを知っている。われわれも米国同様、われわれ自身の外交政策上の関心事がある」と発言したことを紹介した。同紙はまたEU外交官が「われわれはワシントンに注目しない。米国はあるときは9.11以後のイランの役割を賞賛したかと思えば、またあるときにはライス国家安保補佐官が言ったように、イランの兵器確保努力を非難した。はたしてこれが外交政策と言えるのか?」と語ったことを伝えた。

 ロシアのカシャノフ首相も1日、「ブッシュ大統領の『悪の枢軸』発言には現在のところなんら証拠がない」としながら、朝鮮、イラン、イラクが世界平和の「脅威」にならないことを立証するのがわれわれの役割と話した。アンドレイ・ニコライエフ国家下院国防委員長も、「これら3カ国はすべて国連加盟国であり、米国がこれらの国々の危険性を憂慮するのであれば国連に提起し、安保理で扱うべき問題だ」と指摘した。

 また、中国外務省の孔泉報道局長は4日、「こうした論理がまかり通るなら結果は重大なものになる」としながら、テロリストへの攻撃範囲をむやみに拡大すべきでないとの姿勢を強調した。

 世界経済フォーラムに対抗してブラジルのポルトアレグレで開催されている世界社会フォーラムでも2日、ブッシュ発言を非難する決議案が採択され「軍事力の拡大でテロに打ち勝つことはできず、戦争は世界問題を解決できないということを確信する」と指摘した。

米国内でも

 一方、ブッシュ発言に対する批判は米国内でも頻繁だ。

 オルブライト前国務長官はNBC放送の「トゥデイ」とのインタビューでブッシュ発言を大きなミスとしながら、「われわれがホワイトハウスを去るとき、北のミサイル問題を検証できる協定締結の可能性を残しておいたにもかかわらず、それを反故にすることはマイナスになる」と指摘した。トム・アーレン下院議員は3日、北の「問題点」は武器の拡散でテロではないとしながら、「北はアルカイダとなんら関係がない」と話した。「ニューズウィーク」、「タイム」誌、「ロサンゼルス・タイムス」など米国の主要紙もブッシュ発言には否定的だ。

 9.11テロ事件以後、一時は協調路線を取るかのように見えたブッシュはその後、さらなる自国の利益追求、一極主義へと向かっている。21世紀を協調と対話の世紀にしようという世界的な潮流とは正反対に、20世紀の「力の論理」で「世界の警察」を務めようとするブッシュへの国際的な反発は今後さらに高まることだろう。

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事