それぞれの四季
「大変?」、「大変」
梁愛齢
寒いと口から発せられる言葉は短くなるらしい。
「け?」「く!」「どさ?」「湯さ!」で会話になっている。 「大変?」「大変」―これも会話になっている。 不況の風も冷たいのに、BSE(狂牛病)騒ぎは、ブリザードで、年中無休のウチも休まざるを得なかった。開けても1人も客が来ないから(店主であるシオモニは、さっさと旅行に出かけた。さすが人生の達人。こんな時は、あわてても仕方がないと)。 人生の未熟者である私は、駅で会った同業者の娘につい、聞いてしまったのだ。答えは、百も承知なのに。「大変?」と。 「大変だけど満員の日もあるんです。トンネサラムで。それもハッキョの学父母ばかり」と、にっこり。 今年やっと20歳になった若者がトンネサラムと言うのに私は、少しびっくり。でも、すぐつられて、にっこりする。にぎやかな店内の光景が目に浮かぶようだ。 「遅かったね」と声が飛び、顔をあからめて奥にひっこむ娘の姿に「ほんまスネ(순해)するわ」と、美人のアジュモニが言うと、「キがチャするぐらいええ子に育てはったな」とオシャレなアジメが褒める。 「まだまだチョンシンないわ」とオモニ。アボジは「うちの娘が1番や」と、思っていることを無言の内に語る。その顔にみんなの笑いが弾ける。 アボジたちはサッカー好きで、オモニたちは話好き。こんな店は、必ず近くにある。 今夜は、トンポの店で焼肉など、いかがですか。(会社員) |