それぞれの四季

お産に立ちあった娘

李明玉


 2歳の息子の手を引いて、坂を登ること5分。古墳の横の小道を抜けると20本の梅並木である。娘はここから、バスで往復3時間かけて、幼稚園に通っている。山の中腹で、ここまでが住宅街、先へ行くと登山道という場所だ。寒空の下を、実家の母と同世代の先生に手を引かれながら、娘が歩いて来るのが見える。

 半ズボンの下から伸びた足の長さにハッとする。満3歳の誕生日を迎えてから1週間目で入園。大きめに買ったズボンと、下に出ている足の長さは同じくらいだった。切迫早産のため安静にしていた私は、入園式にも行ってやれなかった。しばらくは毎日泣いていた娘が慣れた頃、弟が生まれた。夫が1泊の研修に行ったその日の明け方だった。義母も夫も間に合わず、出産は娘が立ち合ってくれた。分娩台から見ると、丸椅子にチョコンと座って、胸の前で小さく手を振ってニコニコしている。その顔のおでこの白さが印象に残っている。あの頃に比べると、本当に大きくなった。再びハッとする。なぜ2人は歩いてくるのか。バスは坂の途中で故障し、最後500メートル程を歩いてきたのだそうだ。

 翌日、遠距離通園通学者は大変だった。バスはかけがえのない存在で、しかも消耗品である。先日も市の教育委員会へ助成金などの要請に保護者が行ったところだ。そういう訳で、今日は車で幼稚園に娘を迎えに行った。帰ってから、どうも様子がおかしい。臨月に入ったばかりだというのに、生まれてきそうな気配だ。学芸会はあきらめなくてはいけないが、卒園式には出席できるかなと、呑気に考えている。(主婦)

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