米国こそ悪の帝国

労働新聞ブッシュの「悪の枢軸」論を批判

自国の基準で世界を善悪に二分
独断と一方主義のならず者政権
秋の中間選挙へ支持集め図る


 労働新聞14日付は「米国こそ悪の帝国である」と題し、ブッシュの「悪の枢軸」論を詳細に検討、批判する署名入りの記事を掲載した。その要旨は次のとおり。(朝鮮通信)

根拠なき決めつけ

 最近、米大統領のブッシュが唱えた「悪の枢軸」論が国際的に深刻な問題の種となり、物議をかもしている。われわれは、ブッシュが内外の抗議、非難と反対、排撃にもかかわらず、「悪の枢軸」論を米国における今年の侵略的対外政策の基本として打ち出そうとしている状況のもと、その不当性、荒唐無けいさ、侵略的性格と危険性を問題視し、論ばくせざるをえない。

 ブッシュの「悪の枢軸」論には、何の理論的根拠も資料的証拠もない。ブッシュのシンクタンクが作成した一般教書演説の草案では、イラクだけが問題視されていた。ところが、草案を見たブッシュはわが国とイランを書き加えるようにし、「悪の枢軸」と規定した。しかしブッシュは演説で、それを論理的に、資料的に論証する何の根拠も示せなかった。「悪」や「枢軸」の概念も正確に知らないまま、「悪の枢軸」という怪しくでたらめな論理を勝手に持ち出しただけだ。

 ブッシュがわれわれを「悪」と規定したのは道理にまったく合わない荒唐無けいの奇弁だ。またわが国とイラク、イランを「悪の枢軸」と表現したが、わが国とイラク、イランはいかなる同盟的性格の構成体をなしておらず、理念上から見ても制度上から見ても明白な相違がある。つまり、わが国とイラン、イラク間にはいかなる枢軸も形成されていない。

 ブッシュの「悪の枢軸」論は彼の無知の表れであり、政治音痴のたわごとである。ブッシュは、一国の国家首班はおろか、一般政治家としての資質も体裁も備えていない。国家を代表する指導者であるなら見識や学識、理論と定見があってしかるべきであり、ひとことを言っても重みがあり、人々が納得できる説得力と論理性を備えているべきだろう。ところがブッシュは無知で無能力なため、「唯一超大国」の国家首班のポストと体裁にふさわしくない言葉を見境なく乱用し続けている。

 ブッシュという人物を特徴づけるのはギャング、ならず者気質であり、その好戦性だ。実際、米国の多くの人々はブッシュが大統領になるのを快く思わず、ブッシュは2000年の大統領選挙の際、かろうじて大統領の座についた。ブッシュはそれを深刻な教訓に、すべてのことを熟考して言動を正し国家政治を誤らないようにすべきであったのに、彼のこの1年間の行いは誤りに満ちている。

朝米関係最悪に

 米国史上類例のない昨年の「9.11事件」による大惨劇は、ブッシュ政権の目に余る強権と単独主義、一方主義的政策の必然的な産物であった。新世紀に入り、米国の経済がひん死の状態に陥っているのも、やはりブッシュ政権に経済運営能力がないからだ。

 ブッシュ政権の対外政策と外交的手腕は、米とわれわれとの関係の問題だけを考察してみても、いかに粗暴で未熟なものであるかがよく分かる。

 ブッシュチームは執権後、われわれとの関係で前任者の融和的立場とは異なる強硬高圧姿勢で臨むということを示すため、意図的にわれわれにとてつもない言いがかりをつけ、あらゆる罵詈雑言を浴びせた。彼らは、クリントン政権時代に米がわれわれと成し遂げたすべての合意と対話を台無しにしてしまった。

 前任者がわれわれをこれ以上「テロ支援国」「ならず者国家」と呼ばないことにしたのを白紙に戻し、われわれにむやみに「テロ」と「ならず者」のレッテルを貼りつける醜態を演じた。そして「人権」、「宗教問題」、「核問題」、果ては「大量殺りく兵器開発問題」「通常戦力削減問題」まで持ち出して狂奔する一方、何らかの「疑惑」だの「約束履行」だのとあえて口にできないきわめてたちの悪い中傷もむやみに浴びせた。結局、ブッシュ執権後、朝米関係は緩和の軌道から著しく外れて最悪の状態に陥った。

 国と国との関係には国家的性格と重みがあり、たとえ政権が交替しても継承性と一貫性が保たれなくてはならない。しかしブッシュ政権は継承性と一貫性をすべて投げうって朝米関係を極限にまで追い込んだ。実にブッシュ政権は破壊と対決、独断と一方主義が体質化したならず者政権、悪の政権である。

 ブッシュには「悪の枢軸」論について唱える資格がない。

 ブッシュが「悪の枢軸」論で米国を「善」に描きながら自国と思想や価値観の異なる国には「悪」のらく印を押して力で封じ込めようというのは、白昼強盗さながらの論理だ。ブッシュが自分の側に立つ国は「善」、そうでない国は「悪」、すなわち米国式の基準で世界を「善」と「悪」に勝手に二分し、米国を中心とする「反テロ連合」を「善の枢軸」、自分らが「テロ」「ならず者」のレッテルをはりつけた国々を「悪の枢軸」と規定したことこそ、正義と不義、進歩と反動を反転させた悪の教理だ。

 世界で真の悪の帝国、世界最大の悪はほかならぬ米国だ。米国の歴史は悪の歴史であり、米国の対外政策は悪で一貫している。18世紀、先住民の血を肥やしにして国を建てた米国が、侵略と戦争、破壊と略奪、殺りくを繰り返しながら「繁栄」の道を歩んできたのは、否定できない歴史の真実である。20世紀に起きた朝鮮戦争とベトナム戦争、グレナダ侵攻とパナマ侵攻、湾岸戦争とバルカン戦争などは、例外なく米国によって強行された悪の戦争であった。

「反テロ連合」維持、強化

 近来、米国の大統領が一般教書演説で、主権国家を名指しして侵略の脅しをかけたことはなく、わが国に言いがかりをつけて公然と戦争暴言を吐いた例もない。

 ブッシュが「悪の枢軸」論を唱えた背景にはさまざまな目的と打算がある。

 ブッシュは、「悪の枢軸」論で政治的な宣伝効果を得ようと打算した。

 今秋、米国では議会の中間選挙が行われる。ところが現在、ブッシュチームは「9.11事件」、経済破たん、エンロン・スキャンダルで窮地に追い込まれている。さらに与党の共和党は上院で多数派の地位を民主党に奪われた状態にある。

 今回の中間選挙は、04年の大統領選挙の行方と上院の地位を決定するうえできわめて重要だ。ブッシュは、今回の一般教書演説で自分のチームの強硬高圧的な外交姿勢を示すことで、民心の支持を集めて中間選挙の雰囲気を共和党に有利なものにしようとしている。

 ブッシュは「悪の枢軸」論を盾にして軍拡政策を強行し、正当化しようとしている。ブッシュは軍需独占体の積極的な後援でホワイトハウスの主人となった。ブッシュがミサイル防衛(MD)システムの構築に奔走するのは、軍需独占体の利益実現と密接に結びついている。現会計年度に3千億ドルをはるかに上回る最大規模の軍事費を支出しているブッシュ政権は、新会計年度では現会計年度より480億ドルもの大幅な軍事費増額を図っている。

 そして「テロ防止」の美名のもと、MDシステム構築を本格的に推進するつもりだ。このための口実として「悪の枢軸」という虚構が必要だった。ブッシュは「悪の枢軸」論を唱えて軍備を大々的に拡張し、MDシステム開発を推し進め、軍需独占体から受けた「恩恵」に報いようとしている。

 ブッシュが「悪の枢軸」論を唱えた背景にはまた、「反テロ連合」に多くの国々を引き入れそれを維持、強化し、「反テロ戦争」を地球的規模へと拡大して、そこに加わっていない国々に心理的な圧迫感と脅威を与えようとする計略が潜んでいる。米国は、「悪の枢軸」論を唱えて各国を「反テロ連合」にさらに縛りつけ、「反テロ」戦略を引き続き強行、推進して自らに立ち向かおうとする国々を鉄拳で押さえつけようとしているのだ。

「戦争の年」宣布し南訪問

 ブッシュがわが国を「悪の枢軸」と規定したのは、わが国を21世紀の「主敵」、「反テロ」戦略と「十字軍遠征」の主要攻撃目標にするということを公然と宣布し、正面からわれわれに戦争を挑発してきたことになる。米国の最高権力者が直接前面に出てわれわれに対する宣戦布告同様の戦争宣言をしたのは、きわめて重大な事態だ。

 彼が今年を「戦争の年」に宣布したのに続き、南朝鮮行脚を控えて反共和国戦争暴言をためらうことなく吐いたのは、危険きわまりない行動だ。ブッシュが今年を「戦争の年」だと宣布したのは今年、侵略戦争を国家政策の中心課題として打ち出し、これにすべてを集中させるということだ。

 このような彼がわが国に「悪の枢軸」とらく印を押したのは、アフガニスタン戦争の火を朝鮮半島に移そうとする企図をそのままさらけ出したものだ。われわれは、一般教書演説で「悪の枢軸」論を唱えたブッシュが、数日内に南朝鮮を行脚することに警戒せざるをえない。

 さらに危険なのは、米軍武力の最高司令官として戦争命令権を行使する最高執権者が、直接現地で戦争挑発の準備状態を最終的に検証することだ。「悪」を退けると大言壮語するブッシュの南朝鮮行脚に続くものが何であるかは、火を見るよりも明らかである。

 米帝は現在、アフガニスタンのタリバン勢力を崩壊させた「勝利」に酔いしれ、おごり、意気軒昂として戦争狂気をふりまいている。

 わが国は、米国がこれまで武力干渉と戦争ゲームをした国とは違う。ところが政治的感覚と判断力が鈍く、現実の見分けができないブッシュ好戦勢力は、われわれをしっかり把握、認識しようとしないばかりか朝鮮戦争の結果を深く吟味することもせず、われわれにむやみに戦争を挑発している。

 彼らのこうした戦争狂気により朝鮮半島情勢は極度に緊張しており、戦争の爆発が迫っている。事態は日増しに険悪になっている。今こそ、わが軍隊と人民が高度の警戒心と緊張をもって敵の一挙一動を鋭く注視し、戦争態勢に万全を期すべき時だ。

 ブッシュは、侵略と戦争の宣言である「悪の枢軸」論を放棄すべきであり、世界を戦争の火のなかに追い込もうとする無分別なヒステリーを起こすべきではない。これこそが、彼自身と米国を破滅の窮地から救う選択となるだろう。

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