司法試験に合格!  大阪朝高卒  洪太圭さん(26)

「朝高卒ではだめ」  固定観念壊したかった

同胞社会に寄与する弁護士に


 幼ない頃から弁護士になることを夢見ていたと言う。大学4年の時から始めた受験生活を終え、夢が現実のものになろうとしている今、言い知れぬ喜びに浸っていた。「最後まであきらめないで、成し遂げたことが一番うれしい」。

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 大阪・堺市生まれ。アボジの洪性元さん(53)は会社勤めをしながら10余年間、堺朝鮮初級学校教育会長として地域の民族教育発展に尽力してきた。そんな家庭環境で育った太圭さん(26)は、幼稚園から高校まで朝鮮学校に通った。

 負けず嫌いで、本を読むのが好きな少年だった。なにより、小説の中に登場する弁護士に対してある種の憧れを抱いていた。

 「権力に真っ向から立ち向かう姿がかっこよかった。また弁護士である叔父の影響もあって、将来はこの仕事をやりたいと思った」

 高収入、高い社会的地位、社会正義の実践者など、最初は抽象的な概念やばく然とした憧憬(どうけい)からしかとらえることができなかったが、大阪朝高で学ぶうちに弁護士を目指すことの個人的かつ社会的意味を見出したと言う。

 「朝高卒業生は弁護士になれない、その近道は小・中・高とともに日本のエリート校に通うしかないというステレオタイプを壊したかった。朝高卒でも弁護士になれるんだということを、自分が身をもって示したる!」

 また、「在日の置かれた状況が問題意識を持たせた」とも言う。

 かつて、JR定期券割引率差別是正を求める運動が全国各地で展開された。その渦中で太圭さんは、JRに対する要請および世論を喚起するために街頭宣伝を繰り広げる堺初級のオモニたちの背中を見ながら育った。その中にはオモニ・安美子さん(52)の姿もあった。また「外国人登録」の切り替えをうっかり忘れたという理由で、同胞青年が捜査されるというニュースを見るたびにショックを受けた。

 「デモや署名活動などは世論を喚起するうえで重要かつ有効的なものです。しかし、それだけでなく法律を武器にして国家権力に対して直接働きかける方法もある」と、認識するようになった。

 立法、司法、行政の三権分立の中で限られた範囲ではあるが、在日同胞が関わることができるのは司法の分野しかないと考え、弁護士になることを決心したのだ。

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 当初、東大を目指し大学入学資格検定(大検)を受け合格した太圭さんだが、朝高卒業生に国立大学受験資格を認めていない日本当局による民族教育への制度的差別の実態を知る。

 95年、中央大学法学部法律学科へ進学。4年の時、「大学時代に何かを残そう」と、初めて挑んだ司法試験は失敗に終わった。

 卒業後、大阪に戻り受験勉強に励む。「心に決めたからにはやってやる」と、背水の陣を敷いて4度目のチャレンジで昨年10月、念願の司法試験に見事合格。

 その後、在日本朝鮮人人権協会・近畿地方本部の会員や東京朝高卒業生で現在、司法修習生の金舜植さんらと接触し、これからのアドバイスを受けた。

 「私が考えた以上に朝高出身の弁護士に対する期待は大きかった。人脈や同胞ネットワークを生かす意味で頼りにされているんだなぁと、感じ取りました」

 これから弁護士を目指そうとする後輩たちにエールを、という求めに対して太圭さんは、「最後まであきらめないでほしい。自分に負けたら終わりです」と、照れくさそうに言った。

 4月から司法修習生としてスタートラインに立つ。「同胞社会に寄与できる弁護士になるため頑張ります!」。眼鏡の奥の、細い目がキラッと光った。(金英哲記者)

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