春・夏・秋・冬

 「あれでは、『あなたのことは大嫌いで認めるわけにはいかないけど、仕方なく話し合いましょう』と言っているようなもの」。ブッシュ米大統領の南朝鮮訪問時の発言に憤慨して、南の友人がこう語った。先の南朝鮮訪問でブッシュ氏が、朝鮮の国家と最高指導者を散々ひぼう中傷したあげく、「対話提案に真しに応じるべき」だとしたことを指したもの。「矛盾もはなはだしい」と先の友人は皮肉をこめて話す

▼朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と名指しした一般教書演説後の訪問だけに、その発言が注目されたが、相変わらずの独断と偏見に満ちた対朝鮮感に、怒りを通り越してあきれてしまった。「とにかく発言が軽すぎる」と日本の友人記者も指摘する

▼だが、警戒すべきは、その根底にあるブッシュ政権の思惑だ。「北朝鮮に対話を呼びかけはするが、その体制を究極的には『克服すべき悪』と見る」(読売新聞21日付)考えが、一連の発言から見てとれるからだ。朝鮮外務省代弁人が「最高首脳部とわが制度に対するブッシュの体質的な拒否感から出たもの」として、「対話否定宣言」と非難したのも当然だ

▼9・11以降、米政権は世界を「正義」と「悪」とに二極化し、「世界の警察官」よろしく「悪」を排除しようとする動きをあらわにしているが、その「悪」に対する定義は多分に自己中心的だ

▼だが、自分の価値観を押し付けるのが外交ではない。ブッシュ政権は、自主権に対する相互尊重と内政不干渉の原則をうたった朝米共同コミュニケの精神に、一日も早く立ち返るべきだ。(聖)

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