人・サラム・HUMAN

人間味豊かなハルモニに惹かれ

済州道出身の海女の半生を映画化・原村政樹さん


 済州道出身の在日朝鮮人海女、梁義憲さん(86)の半生を撮った記録映画が完成した。「シンセタリョン―ある在日朝鮮人海女の半生」(49分)がそれ。

 監督は原村政樹さん(45)。上智大学在学中、探検部に属し、アジア各地を回りながらマイノリティーの文化に魅せられた。81年からフリーランスの助監督としてドキュメンタリー映画に携わってきた。桜映画社に入社後、監督・脚本家として現在に至る。この間、川崎や大阪の在日同胞と親交を結び、在日朝鮮人問題の理解を深めてきた。原村さんは「人間味豊かな梁さんの表情と豪放磊(らい)落な話し振りは本当に魅力的。在日だけでなく多くの日本人に観てほしい」と語る。

 梁さんは25歳で夫の後を追って日本に渡り、すでに61年。梁さんの35年前を記録した白黒の16ミリ映画フィルムが残されている。その映画には大阪・生野での暮らしぶりや済州道の海や対馬での海女の仕事、そして、朝鮮に帰国する4男との新潟での父母との別れが克明に記録されている。

 この映像は朝鮮通信使の研究者、辛基秀さんが2年間、梁さんに密着して撮影したもので、在日1世の女性の過酷な労働と植民地支配と祖国の分断で翻弄された家族の歴史を伝える。

 当時、さまざまな事情でお蔵入りを余儀なくされ、長く忘れ去られていたこの辛フィルムを見つけた原村さんは、新たに梁さんと家族の現在を撮って、完成させた。TEL 03・3478・6110へ。

視線は弱者に

「パランピッ」に出品 金牡丹さん

 先日、東京・銀座で開かれた第5回在日朝鮮人女流美術展「パランピッ」に出品した。作品名は「柘榴」と「WHERE」。

 柘榴は東洋では、子孫繁栄を意味するめでたい果実とされている。しかし、作品にはあえて「腐った柘榴」を描いた。「社会に対するアンチテーゼみたいなものなんです。子孫を産まなくてはいけないという決めつけが、そうしたくてもできない人たちを苦しめている」。現代は女性にとって、「めでたくない」状況と考える。「結婚、出産だけを望まれても困る」というのが本人の弁。

 「WHERE」には月光の中、イスラムとも朝鮮ともつかぬ人々が、漂う姿が描かれている。「どこに行けばいいのかわからない」、そんな雰囲気が伝わってくる。作者の視線は常に「弱者」に向けられている。「パランピッ」には94年の初回から欠かさず出品している。

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