取材ノート

知識が血となり肉となる


 先日、ある日本の女子大生と話す機会があった。友人の中に在日コリアンが多くいるという彼女は、在日の問題をテーマに卒論を書きたいという。本名で通っただけで、周りの日本人学生から興味の対象とされた記者の学生時代とは隔世の感がある。

 朝・日の同じ世代が、何のこだわりもなく仲良くできるのはおおいに結構なことだ。しかし、1つだけ忘れないでほしいことがある。朝鮮半島と日本との間には、過去の問題がきちんと片づいていないということをである。

 しかし、一方で、世代交替が進むにつれ在日の若者の間でも、1世が日本にどう渡ってきたのか、国を失ったためにいかにむごい仕打ちを受けたのか、という事実について知らない者が増えてきているのも現実だ。在日の起点、自分たちのルーツをよく知らないことが、民族性の希薄化につながってしまう。

 そんな今だからこそ、きちんと記録に残しておこうとアクションを起こした朝大生たちを取材した。

 1世の聞き書きを行っている政治経済学部科研サークル「在日朝鮮人運動論」のメンバーたちだ。1980年以降に生まれた彼らにとって、教科書などで学んだとは言え、1世の歴史はほとんど「昔話」の状態。リアリティーがわかないのも当然かもしれない。

 そんな彼らだからこそ、植民地時代を実際に体験した人の話はたいへんショックだったようだ。

 「このように実際の体験談を聞くのはとてもいいことだ。それでこそ、知識が知識で終わらず、自分の血となり肉となるからだ」

 今回、学生たちの聞き書き対象となった李秀均さん(78)はこう話す。

 誰かに言われたのではなく、自ら進んで聞き書きを続ける学生たち。祖国解放後の在日朝鮮人運動についても、随時体験者から話を聞くつもりだという。興味のある人は誰でも参加してほしいそうだ。(聖)

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