ウリ民族の姓氏−その由来と現在(47)

南陽洪氏の始祖は高麗功臣

種類と由来(34)

朴春日


 いまはやりのクイズではないが、「それでも地球は回っている」といった人は誰か? と問えば、大抵の人は正しい答えを出すであろう。

 では、朝鮮の学者で初めて、「幾千万の星が銀河をつくり、太陽や地球はその1つである」と説いたのは誰か? と聞けば、どんな答えが返るであろうか。

 この学説について、日本の学者は「東アジア初の宇宙無限論」と高く評価したが、これは1770年頃、わが国の傑出した実学思想家であり、天文学者である洪大容(ホン・デヨン)が唱えた説である。

 彼について中国の学者・潘庭鈞は、「実に博学で天文学・兵学・朱子学を深く研究し、詩文から数学に至るまで秀逸」と称賛した。

 とくに洪大容の「地球1日1周回転説」は、コペルニクスの地動説とは別に、朝鮮独自の天文学が生んだ「地転説」の成果である。

 彼はまた、人類の起源、階級と国家の形成、法律と制度について論じ、「無為徒食の貴族階級が国と民衆を滅ぼす」と批判した。そして進歩的な「均田論」と「兵農一致」論を説き、100万人の軍隊を編成するよう主張するなど、社会思想の発展に大きく貢献した。

 洪大容は南陽洪氏の後裔(えい)である。洪氏は著姓の上位にあって、本貫は100余を数え、南陽・豊山・開寧・懐仁・慶州・義城などが広く知られている。

 南陽洪氏の始祖は洪殷悦(ホン・ウンヨル)で、その子・洪厚ともども高麗の功臣であったという。また洪仁桂は、倭寇など外敵の撃退で武勲を立てた。

 李朝時代には、外交分野で活躍した人物が多い。とくに洪彦秀の子・洪季男は、軍官として訪日使節に加わり、日本の侵略企図を見抜いて国防の急務を説いた。そして、壬辰倭乱が起こると、父とともに勇敢に戦い、戦死した父を抱いて敵将を倒した逸話は有名である。

 また洪喜男は、対日・対明外交の名訳官として活躍した。彼は第3次朝鮮通信使から第6次まで訳官を務めたから、よほど日本語に堪能であったに違いない。

 さらに第9次の正使・洪致中、第10次の正使・洪啓禧も、徳川幕府との善隣友好に大きく貢献した。

 豊山洪氏の始祖は洪之慶で、彼は高麗・高宗時代、国子直学の要職についている。

 懐仁(フェイン)洪氏の始祖は洪延甫で、その後孫・洪允成は領議政まで務めた。

 洪州洪氏の始祖は洪規、義城洪氏の始祖は洪儒で、ともに高麗建国の功臣である。

 逆に、洪茶丘は祖国を裏切り、蒙古の走狗となって高麗・日本侵略に狂奔し、悪名を残して果てた。

 李朝末の平安道農民戦争の指導者・洪景来は、南陽洪氏の後裔だ。腐敗した封建支配層を痛撃し、民衆の底力を示威した意義は大きい。次回は宋氏である。(パク・チュンイル、歴史評論家)

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