それぞれの四季

悲劇

梁愛齢


 「悲劇には、悪者がいない」

 ―誰か有名な人の定義らしい。悪者がいないのに起こる悲劇こそ真の悲劇なのだそうだ。例えば、痴呆の妻が、夫の死を理解できなくて、食事の準備を何カ月もしていたという東京近郊の団地で起きた事件は、悲劇といっていいと思う。

 このニュースを伝えながらキャスターは、介護保険制度を悪者にしていた。しかし、この場合、それは間違いなのだ。

 「何に利用されます?」―介護保険を使おうとするとき、最初に発せられるのは、この質問のはずだ。家事を援助してほしいのか、入浴を援助してほしいのか、など。

 ハラボジ、ハルモニのために階段に、手すりをつけたい時も介護保険は利用できる。1割の自己負担ですむ。

 しかし、それは契約をしてからの話だ。65歳以上になったら手元に届く介護保険証は、そのままでは使えない。

 「要介護認定」を受ける必要がある。区役所もしくは介護保健施設で申請し、約1カ月後、認定結果がおりる。介護度が決まると、ケアマネージャーと相談して計画を立て、事業者を選びそのサービスを利用するわけだ。

 日本では2010年には痴呆、寝たきりの高齢者が200万人に達するそうだ。

 異国での辛く苦しい生活をたたかってきた同胞高齢者が、少しでも楽な老後を送るためには、解決しなくてはいけない問題は多い。総聯の各組織もこの問題に取り組み始めたところである。

 でもまず、介護保険に関する正確な知識を身につけることが先決であろう。(会社員)

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