春・夏・秋・冬

 「即時、無条件、無制限」――、イラクの大量破壊兵器査察に対する国連の条件である。国連とはいうものの、イコール米国の突き付けている条件であることはいうまでもない。米国は、これが受け入れられなければ軍事攻撃だと騒ぎ立てている

▼国家主権など、米国の前には存在しないといわんばかりの、この法外というか、めちゃくちゃな査察に当たるのがハンス・ブリクス。国連監視検証査察委員会委員長、元国際原子力機関(IAEA)事務局長でもある

▼この名前を耳にして、どこかで聞いたことがあるな、と思う読者は多いと思う。というのも、92年5月から93年1月まで6回にわたりIAEAが行った朝鮮の原子力施設に対する特定査察の責任者だったからだ。つまり、あの核疑惑騒動を引き起こした張本人なのだ

▼92年秋までの査察を踏まえてブリクスは当初、朝鮮がIAEAに提出した原子力活動の報告書にはなんら問題はない、と断言していた。ところがその後、その発言を急にひっくり返した。朝鮮側とIAEAとの間には「原則的な問題で不一致」が存在し、朝鮮側は報告以外に2カ所の「原子力施設」を隠しており、強制力のある特別査察が必要だ、と前言を翻したのである。その背後には米国の存在があった

▼むろん朝鮮側は強く反発。原子力工業部が93年2月にIAEAの査察の活動全容を明らかにした詳報を発表し反論したが、事態は悪化。翌年春、戦争直前にまで追い込まれたことは周知の事実だ。ブリクスの登場は、軍事攻撃開始のサインと取れる。(彦)

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