よりよいウリハッキョを−現場の取り組み−(5)

入学希望者みんなが入れる環境作り

名古屋初級教育会 李栄基会長


運営は好転

 2000年4月、愛知朝鮮第1、第2、第3初級を統合して新しくできた名古屋朝鮮初級学校(李章哲校長)は230人の児童と園児、20人の教職員でスタートした。本校には名古屋市、一宮市、東海市など名古屋市周辺の広範な地域から子どもたちが通っている。

 新たなスタートを切った本校の理事会では学校運営について議論を重ねた結果、以前のように一部の同胞や保護者に負担を集中させるのではなく、より多くの同胞に学校を支えてもらえるようにしていくことを決めた。そこで始めたのが「1口3000円(月額)愛校運動」だ。

 この運動は、「ウリハッキョの子どもは地域の子ども。学校は地域の同胞が支えよう」という考え方に基づいたものだ。1人でも多くの同胞がウリハッキョを「自分の学校」と思い、学校を支えるための具体的なアクションを起こしてくれるような運動をめざした。

 開校した年、学校運営に必要な年間予算は1億280万円だった。自治体からの補助金や授業料収入を除くと約7000万円が不足していた。この不足分を1口運動と事業収入でまかなうことを決め、1口運動の目標を1500口に定めた。

 理事会のメンバーはあらゆる同胞と日本市民に声をかけ、毎日のように運動の趣旨を説いて回った。

 皆が一丸となった結果、運動には511人が参加。目標口数と金額をほぼ達成し、学校運営の状態は好転した。保護者や総聯同胞はもちろん、民団や南から来た同胞、国会議員、病院院長、給食の業者、ビルのオーナー、米屋を含む日本市民までさまざまな人たちが賛同してくれた。実際私も不動産業を営んでいる商売柄、付き合いのある日本人業者に協力を求めたところ、快く応じてくれた。

 今年度は1700口を目標に掲げた。運動の幅を広げようと現在奮闘中だ。

事業報告書を発行

 学校運営に関しては、徹底した情報の公開と共有をはかった。

 寄付してくれた人たちにその用途を報告するのは最低限の義務だ。しかし、これまではこの当たり前のことをしなかったため、組織や学校に対する根深い不信が生まれてしまった。

 この反省に立ち、本校では毎年、年間事業報告書を発行することにした。80ページからなる報告書には、1口運動に協力してくれた人たちの名簿と金額、学校の会計収支と次年度の予算が掲載されている。予算に関する説明も載せた。

 報告書には学校の年間行事や学校生活に関する子どもたちの思い出もつづられている。このように編集したのは、報告書を手にした同胞たちが学校と一体感を持ってくれれば、という思いからだ。

 反響はよかった。現状を問題点まで含めて正確に伝えることが不信感を拭うことにつながるとあらためて感じた。統合を機に学校のホームページ(http://www.h3.dion.ne.jp/~n c c)も立ち上げ、パンフレットも発行した。運動会のプログラムには各家族ごとの紹介コーナーも設け、好評を得た。

 統合を機にひとつになったオモニ会、アボジ会はキムチや米などの販売、ゴルフコンペを通じて財政を補ってくれただけではなく、ほかの保護者を訪れ、学校運営に関する意見を聞き、理事会に反映してくれた。

児童数年々増加

 本校では厳しい生活状況の中でも朝鮮学校を選んでくれた保護者の負担を軽減するため、2人目からは授業料を半額にしている。週2回の給食は無料で実施。年末にはお年玉として子どもたちに図書券をプレゼントした。今年度は暖房費を5000円から3000円に減額した。

 また広域から通う子どもたちのため、通学バスを10台出している。

 日本の教育を受けた自身の経験からも、幼少期から民族教育を受け、自分の出自に対する誇りを育んでほしいと切に思う。そのためにも将来的にはウリハッキョの授業料を日本の公立学校並みに抑え、望む人すべてが通えるようにしたい。

 開校した2000年度の園児、児童数は230人。01年度は243人、02年度は255人と、着実に増えている。それが地域の同胞が支えてくれた結果だ。

 学校を守るためには何よりも学校を運営、経営する側の発想が変わらなくては、と思う。

 朝鮮学校を選んでくれた保護者にできる限りのサービスをし、学校を支える人たちの思いに誠実に応えること。この努力を続けてこそ、地域の同胞に愛され、「行きたい」と思う学校を作ることができる。

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