関係良好な朝鮮とEU

欧州5カ国10都市をたずねて

李達英


 今年の初めから約2カ月間、研修と視察を兼ねて欧州各国を訪れた。行った先はイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン。ドイツとイタリアでは朝鮮大使館を訪問し、EU(欧州連合)における朝鮮外交の現状をリサーチした。

駐伊大使と会見

駐独朝鮮大使館で洪貿易参事官(右)と

 ドイツではベルリンの朝鮮大使館を訪問し、洪チャンイル貿易参事官と面談した。

 東ドイツ時代に建てられた大使館は大きい。朝鮮は以前からドイツの生産力や技術力、気質を評価し西独との交易も重視してきた。

 対欧州外交で最も力を入れるのがドイツであり、貿易額も対欧州で最も多い。

 昨年3月の朝独国交正常化後、両国間では通商協定を準備中だそうだが、この正式な国家間の枠組みが完成すれば、朝独間の経済交流は本格的に動きだすと思われる。

 また朝鮮は、ドイツ最大の州であるバイエルン州政府との間で広範囲の協力プログラムを討議中であり、これに加わるシーメンスなどの大企業は以前から朝鮮進出を模索しているとのこと。これらが成就すれば、朝独間の通商では大きな飛躍が期待できる。

駐伊朝鮮大使館で

 EUとの関係良好ぶりを語るうえで、イタリアの存在は欠かせない。2000年1月4日の朝伊国交正常化が、EUにおける対朝鮮関係正常化ラッシュのきっかけになったからだ。

 そのイタリアでは、ローマにある朝鮮大使館で金フンリム大使に直接お会いし話をうかがった。まず政治的には、昨年6月に就任したベルルスコーニ首相は右派だが、「前左派政権の対朝鮮関係は正しかったのでこれを継続する」とのスタンスを表明しており、政治関係者の往来も継続しているという。

 経済的には、投資保護や二重課税防止などの通商協定を細部で詰めている段階で、この枠組みが完成すれば朝伊間の経済交流の本格始動も期待できそうだ。

 すでにアニメーションの委託製作が始まっており、トイレ用衛生磁器やアコーディオンの委託加工などが有望な案件として浮上しているとのことである。さらに朝鮮からは50余人が留学生として滞在しているが、その半分以上の費用をイタリア政府が負担しているという。両国の関係が思った以上に接近していることを確認した。

朝鮮協力の文書も

大英博物館内にある朝鮮の政治ポスター

 朝鮮とEUの関係は良好だ。朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と息巻く米国の関係とはまさに逆。一昔前なら米国に追随したであろう欧州の対朝鮮外交だがEUという共同体の強化を背景に、朝鮮に対しても自主的で戦略的な外交がなされているようだ。

 昨年5月にEU最高位級代表団が朝鮮を公式訪問し、金正日総書記と会談したことは、朝欧間の正常化を物語る象徴的出来事だ。

 最近では、朝鮮の李光根貿易相がEUの招請で訪欧、同時にEU執行委は今後の対朝鮮協力を内容とする戦略文書を採択した。EUの対朝鮮経済協力の動きは今後も目が離せない。

 しかし、ここで忘れてならない点がある。

 金駐伊朝鮮大使は、私に次のように話した。

 「故金日成主席も言われたが、世界には大きい国もあれば小さい国もある。生活レベルの高い国もあればそうでない国もある。しかし地位の高い国、高くない国というものはないはずだ。いついかなる時も朝鮮は相手国と同情に基づく関係を築こうとは思わない。あくまでも相互尊重と互恵が原則だ。われわれはイタリアとの正常化交渉でもその点を強く主張した」

 EUとの協力関係では、あくまでも相互尊重の精神が貫かれるべきだということだ。これは当然ながら、対米、対日外交においても適用される。

 互いに国を「正常に」認めてこその国交正常化であり、まだそこにたどり着かない現状において、いくらかの金銭目当てで尻尾を振るような「正常化」は間違ってもやらないというのが朝鮮外交の信条だ。この原則を欧州で再確認した。

 それと同時に、いずれ朝鮮と日本が正常化した暁には、私の勤める朝・日輸出入商社が、日本における朝鮮の貿易代表部として培ってきた過去30年間の基盤とノウハウに沿って、朝・日間経済交流のスムーズかつ大規模な活性化に寄与できることも確信できた。

欧州の一体化実感

パリのオルセー美術館
水の都ベネツィア

 今回の訪問期間、計10の都市を訪れた。

 最も魅力的だったのは、水の都・ベネツィアだ。運河に囲まれた、その独特の風景と静けさが心に残った。また行った先々では美術館をのぞいた。印象派が好きなオモニの影響もあってか、パリのオルセー美術館ではモネの絵画に見入った。

 多くの都市や美術館を訪れるうちに、ヨーロッパの歴史文化的背景や美的感覚などを学んだ。歴史を刻む街並みと、その鮮やかな芸術には、豊かなセンスと深い思考力が同居する。そのあたりの精神性が、対朝鮮外交における米日とのスタンスの違いとして現れているのかもしれない。

 欧州では多くの移動を鉄道に頼ったが、陸続きで国家間の鉄道システムが連結されているせいか、移動は極めてスムーズ。EUという共同体の「近さ」と「便利さ」を体感できた。

 また、今年から導入されたユーロを使いながらも、欧州の一体化を実感した。

 壮大な国家間の統合を進め、世界での存在感を高める欧州。その自信も背景に、朝鮮とのパートナーシップも急速に深めていると感じた。(リ・ダリョン、朝・日輸出入商社係長)

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事