よりよいウリハッキョを−現場の取り組み−(6)

「教育の情報化」積極推進

神奈川初中高 金燦旭教員


政府目標の2年前

 インターネットの急速な普及とともに、コンピューターを使いこなすのが21世紀を生きるうえで欠かせない条件になりつつある。

 朝鮮学校でも85年から「情報」科目が取り入れられているが、90年代半ばからの急速な変化への対応は、各校ごとに進められているのが現状だ。

 本校では95年頃から私を含む数人の教員が中心となり、担当を決めて勉強しながらこうした作業を進めてきた。98年には学校独自のサーバーを立ててインターネットに接続し、学校のホームページも立ち上げた。さらに翌99年には教員室、コンピューター室、理科室など、校内各所のコンピューターをすべてネットワーク化し、インターネットにつなげた。他の朝鮮学校、日本の学校に比べても早い方だったと思う(日本政府は2001年を目途に全公立学校をインターネットにつなぐとしていた)。

00年から本格取り組み

 2000年、創立50周年を迎えた本校では、特色ある学校作りの柱の一つに、語学教育とともに情報教育の強化を据えた。そして同年から、「教育の情報化」を積極的に進めている。

 私たちはそのための中心問題を@「教育の情報化」の定義と実現方途の検討A教育活動に有用な情報資料の収集と利用方法の研究B現場の教員と生徒たちにもたらす効果の研究C教員が備えるべき能力と方向性の検討D民族教育全体の発展にどのように寄与できるかの研究E情報教育のレベルと内容、授業の方法論を研究――の6点に定め、研究、実践を始めた。

 まず、子どもたちが高級部卒業までに備えるべき能力の目標を、@ワードで朝・日の文書をスムーズに作成Aエクセルで住所録や見積書程度を作成Bインターネットを利用して必要な情報をスムーズに検索、収集、保存C自力でホームページを作成Dコミュニケーション手段として自由に正しく電子メールを利用Eコンピューターと周辺機器を1人で正しく操作F簡単な音楽、アニメーションを作成Gパワーポイントを使ってプレゼンテーションHコンピューターによる情報処理の必然性と便利さを認識し情報社会で生きるための正しい態度を身につける――ことに置き、一貫した指導を行えるようにした。

 カリキュラムも見直した。「情報」の授業を中2、高1〜3の週1時間必修とし、少なくとも4年間、体系的な情報教育を受けられるようにした。元来、高2〜3年の理系コースで「情報」は選択制だが、本校では理系コースの生徒たちのニーズに合わせた内容で授業を行っている。さらに高3の選択科目に週2時間の「情報」を加えた。授業内容も、それまでの技能修得的なものから、情報活用能力の向上に重点を置いたものに変えた。

 次に、教員たちの教育活動でも情報化を推進し、スキルアップを図った。

 教員室に多数のコンピューターを備え、授業準備などにインターネットを活用するのはもちろん、ファイルサーバを利用して各種資料を保存、共有できるようにした。また「情報」以外の科目でも積極的にコンピューター室を利用し、あらゆる授業でインターネットを活用するようにした。

 さらに校内におけるあらゆる事務的な作業で積極的にコンピューターを利用するようにした。試験の統計、生徒の出席・欠席、成績の統計、試験問題、教授案など各種資料を電子化することで作業をスムーズにして時間を大幅に短縮し、資料を最大限に有効活用できるようになった。

県内初中にも波及

 また学校ホームページの運営など、学校宣伝活動においても大きな力を発揮している。学校のホームページは、ネット上の同胞社会だ。つまり、単なる学校のホームページなのではなく地域社会の拠点、ネットワークの中心だ。直接学校を訪ねてこられない卒業生も、ホームページになら簡単に訪れることができる。

 本校では今年度の卒業生から、自分たちの期のホームページを作成して卒業するようにした。こうして場を作っておけば、彼らはその仮想空間でいつでも会ったり集ったりできる。また母校の私たちともつながれるし、同胞社会ともつながりを保てる。この意味は決して小さくない。

 教育の情報化は、同胞社会の「絆としてのネットワーク」につながっていくからこそ意味がある。ウリハッキョの情報教育は、そのためにやっていると言っても過言ではない。

 本校の取り組みは県内の各朝鮮初中級学校にも波及している。私たちも積極的に協力し、今では県内のどの学校も高速回線で結ばれている。また全国の朝鮮学校の情報担当教員はメーリングリストなどを通じて情報交換を重ねており、他の地方でもさまざまな取り組みがあると聞いている。

 今後もさらなる可能性を追求したい。

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