座談会「輝け!働く女性たち」
女性の潜在力の活用を
人も組織も意識改革が改善のカギ
女性の社会進出が進む中、いまや日本では「子供が生まれても働きつづけたい」と願う女性が85%を占めるという時代になった(日経ウーマン2001年調べ)。しかし、その一方で、自分の環境では、子育てと仕事の両立は難しいと思う人が63%にも上るという。子供を抱えて働く女性のライフスタイルは人によってさまざま。同胞社会の中でも、働く女性たちの活躍の場は広がってきている。都内を中心に、同胞団体などで働く男女3人に話を聞いてみた。(司会=金潤順記者) ●許沼蓮 在日本朝鮮人教育会指導員。出産3週間前まで出勤。4カ月の娘がいる。現在、職場の了解を得て、子供を保育園に預けるまでの間(今年4月)、母子出勤している。「出産は病気じゃない。だから辞めたくはなかった」という。28歳。 ●趙英淑 在日本朝鮮民主女性同盟中央本部国際部長。初級部5年に息子、1年に娘を持つ2児の母。「近頃、同胞女性も高学歴になり、結婚、出産を理由に仕事をあきらめなくなってきた。これは10、20年前と比べたら大きな変化」という。41歳。 ●許相浩 結婚6年目。4歳の息子と1歳の娘がいる。「僕は、出産という大変な仕事をする女性たちを尊敬する。子育ては夫婦でするもの。子供が成長する期間はできるだけ関わりたいと思っている」。28歳。 ――朝鮮新報に働く女性に関する記事が出たが。 沼蓮 今の時代、女性が社会に出て働くこと、そして家事、育児の分担は「当たり前」と考えていたので、新報の記事を読んで、もちろん私より年上の方の話だったが、正直言って家事や育児をすべて女性がしなくては…という発想に納得がいかなかった。 趙 今まで新報の紙面で、ばりばり働く女性が取り上げられることはあっても、働く女性の悩みや困難な状況など、影の部分はあまり語られなかった。女性がすべてを抱え込んで「スーパーウーマン」になるのでは、問題解決にならないと思う。 ――世間は働く女性に冷たいと思いますか? 趙 女性が働きながら子供を産み、育てることに対して、世の中はそんなに歓迎していない、世間の風は冷たいと思う。 沼蓮 私自身、朝高を卒業して、同じ職場で10年働き、結婚、出産をしたが、結婚したら「まだ続けるの?」、子供ができたら「いつまで?」と聞かれ、周りの目がとても気になった。世の中には理解のある上司もいるけれど、ない人もいる。上司に理解がないと働きづらいと思う。 趙 確かに効率面だけを考えると、育児期間の女性は条件が悪いかもしれない。でも、質の面を重視すれば、何年か後には人間的に成長した人材になり得ると思う。女性の潜在的な力を活用するという視点が不可欠だと考える。 ――男性の家事、育児参加は恥ずかしいこと? 相浩 家庭を持っている先輩と一緒にいても、家事や育児の話題はほとんど出ない。 沼蓮 男が家事や育児をするのはカッコ悪いというのが男の人の中ではあると思う。 相浩 僕の場合、「共働き」である以上、家のことはできる限り協力し合うのが当たり前だと思っている。でも、男が家事や育児をすると、なぜか周りからは女性の方が責められたりする。「奥さんは何をしているんだ」ってね。他人に妻を悪く言われるのは耐え難い。妻も仕事をしている以上、子供が熱を出せば、時には僕が病院に連れて行ったり、保育園の送り迎えをしなければならないときだってある。それに、家で僕が進んで食器洗いや洗濯物を干した時に、妻が「ありがとう」と言うことがあるが、違和感を覚える。僕は妻に対して日頃そんな言葉を言ったことがないから。お礼を言われてうれしくないことはないけど、妻に「ありがとう」を言わせること自体フェアじゃないんだと思う。 趙 確かに同胞社会は伝統的な考えに縛られているところがあるのかも。個人の意識も色々だし。家庭や職場で、女性とパートナーとしてきちんと向き合い、話し合える機会がもっとあれば良いと思う。 ――職場での女性の役割についてはどう思いますか? 沼蓮 多くの場合、女性は職場で最初から期待されてないようなところがある。だから本人たちの意欲もない。私自身そうだった。5、6年目に、的確な資料を提出したことで、初めて上司に評価された。そのとき「役に立っている」という実感が沸いた。でも、そこまでいかずに辞めてしまう女性が多過ぎる。上司も考え方を変えるべきだけど、女性たちも頑張らなきゃ。 趙 あるね。そう言うところ。誰にも期待されない電話番とか(苦笑)。これから社会に出てくる卒業生らが、新しい門出から公平に扱われなかったら腐っちゃう。それがあきらめにならないよう、組織も変わらなきゃ。 相浩 女性同盟にも男性職員を入れたら? 趙 朝鮮大学校編入班の生徒たちが見学に来たとき、そう言う子がいた。これからは何事も二人三脚なのかも。最近では、「子育て」をテーマにした女性同盟のイベントに「なぜオモニだけ?」といった意見が多く、両親が共に参加するファミリー型が増えつつある。時代は変わりつつあることを実感する。 ――教育に関しても指摘すべき点はありますか? 趙 ある人の娘が中学生になるんだけど、日本の学校に行って、生徒会長が女子だったことにものすごく驚いてたんですって。朝鮮学校では、「長」と言えばすべて男でしょ。初級部から大学までずっとこの繰り返し。古い型の男性と女性が再生産されている。それは家庭の中でも言えること。息子をかわいがるあまり、何もできない男に育てているのは母親だと言うことを自覚しなくてはいけない。未来に向けて、伝統を断ち切る勇気も必要だと思う。 ――「未来に向けて」ですか、良い言葉ですね。みなさんの言葉から、今後の取り組みへのヒントを得ることができたような気がします。問題解決の道のりは長いと思いますが、職場や家庭で、働く女性や、家事、育児の男女協力について話し合う材料になったと思います。お忙しい中、ご協力ありがとうございました。 |