ペイオフ解禁(下)
ここが知りたい
韓鐘哲
今回も前回に引き続き、読者から寄せられたペイオフ凍結解除に関する質問・疑問に答えながら、ペイオフ凍結解除前後の対応方法などについて解説していきます。
Q1 ペイオフの記事の中で「名寄せ」という文字をよく見ますが、いったい何のことですか。 A1 「名寄せ」とは、ペイオフの預金保護の対象となる人を特定するための作業のことです。同一人物が一つの金融機関の複数支店に預金をしていてもそれらを合算して、預金者1人につき元本1000万円とその利息を保護します。このとき、偽名を使ったり、他人名義を使ったりした預金は保護しないことになっています。 Q2 預金金額が1000万円以下なら「名寄せ」は関係ありませんか。 A2 無関係ではありません。金融機関が破たんした場合、「名寄せ」が終わらない預金は、たとえ1000万円以下でも引き出せないことになっています。また、結婚などで名前が変わった後も旧姓のままで預金していた場合、旧姓名義の預金との関連が証明できないと旧姓名義の預金は保護されない恐れもあるので、名義変更の手続きはきちんとする必要があります。 Q3 家族名義の預金はどうなりますか。 A3 家族ひとりひとりの名義で「名寄せ」されるので、偽名、他人名義でないことが確認できれば、収入がない子供でも、1人につき一つの金融機関で1000万円まで保護されます。ただし、収入のない子供が1000万円の預金を持っているということは、当然贈与にあたるので、贈与税の手続きをとっていないと他人名義の預金と判断され保護されない可能性があります。 Q4 破たんした金融機関に住宅ローンなどの借入金と預金がある場合はどうなりますか。 A4 預金があって、かつ借入金がある場合、預金から借入金分を差し引いて清算することを「相殺」といいます。金融庁は破たんした金融機関の預金者が、預金と住宅ローンなどの借入金を相殺できる「相殺規定」を国内すべての金融機関が導入するよう指導しています。 例えば、破たんした金融機関に2500万円の定期預金がある一方で、2000万円の借り入れがある場合、預金と借入金の相殺ができれば、ローンはなくなり、残った預金の500万円は全額保護対象になります。ところが、相殺を行わないと2000万円の借り入れは残ったうえ、預金のうち1500万円は減額される可能性があります。このように相殺をするかしないかは、預金者に大きな影響を与えます。とくに中小企業などが受ける影響は大きいでしょう。 ただし、相殺には預金者の申請が必要になります。また、相殺できるのは破たんした金融機関から直接借りているローンなどに限られていて、破たんした金融機関で口座引き落としをしていても公庫や生命保険会社から借り入れているローンは相殺の対象になりません。 Q5 ペイオフの凍結解除に向けて、どのような準備をしたらいいですか。 A5 まず金融機関ごとに、どんな金融商品がいくらあるかをチェックしてください。元本補てん契約がある金銭信託やビッグ、ワイドなどの預金保険の対象となる金融商品も同じ金融機関の預金と合計し、1000万円以内なら全額保護されます。チェックの結果、1人につき一つの金融機関の預金合計額が1000万円を超える場合は、預金の分散や預け替えを検討する必要があります。 ただ、分散や預け替えをした金融機関が破たんすると預金の引出しまでに時間がかかるので、倒産リスクの少ない金融機関を選ぶことが大切です。普通預金や当座預金などの「流動性預金」は2003年3月まで全額保護されるので、元本を守ることを優先して、1000万円を超える部分をいったん普通預金に移動し、それからゆっくり時間をかけて分散や預け替えの金融機関を探すという方法もあります。また、1000万円を超える部分の家族名義への分散はQ3で説明したようなリスクがあるので慎重に行う必要があります。 |