グローバル新風
怪物に食われないように
世界経済には「怪物」がいる。グローバリゼーションという「怪物」が暴れている。
97年に今の仕事を始めた私は、のっけからアジア経済危機という凄まじい現象を目の当たりにさせられた。まるで手品のように、まるで突発的に、経済の混乱と、生活の激変をもたらすその威力。それはまさに「怪物」の仕業と呼べるものであった。 その「怪物」が「退治」されるべきという意見が沸き起こった。世界各地で「反グローバリズム」の運動が展開された。短期資本の移動規制など「怪物」を「懐柔」しようという動きもあった。 しかし今もって、グローバリゼーションという潮流が消え去る事は考えにくい。少なくとも現世において、それは「状態」であり「現実」だ。国家や企業間のメガ・コンペティション(大競争)はこれからも続けられるだろう。そこでは同胞も祖国も無縁ではいられない。同胞商工人にとっては企業の競争力強化が、祖国にとっては対外交易の促進が「いまそこにある問題」だ。 「思想における否定、商業における順応」。この一見、相反する二面性と向かいながら、このコラムも書いてきた。いちおう掲載紙面が「同胞のための経済欄」なので、後者の観点を主に前提にしたが、しかし前者の問題にも何度か触れるうちに、世界経済に対するより包括的な視野と思考を磨くことができた。 このコラムもこれで最終回だが、自分の目と頭をより鍛えながら、この「怪物」に食われないよう接して行くつもりだ。約2年のあいだ、延べ25回のコラムを書く中で、多くの叱咤激励をくださった同胞読者諸氏に感謝したい。(李達英=朝・日輸出入商社 pulgasari@yahoo.co.jp) |