埼玉・東部同胞生活相談綜合センター
「特定非営利活動法人(NPO法人)」取得
地域単位では初
地域単位の同胞生活相談綜合センターでは初めて、埼玉・東部綜合センターが「特定非営利活動法人(NPO法人)」を取得した。2月27日、土屋義彦県知事の設立認証書が下りた後、3月7日に地方法務局で法人登記手続きを済ませた。
法的資格は社会的認定、信用 県下で最初に開設した同綜合センター(99年10月20日)の管下には、約3千6百人の同胞が住んでいる(活動範囲は7市4町)。開設後、同胞の生活相談や高齢者、障害者への支援活動および子育てや教育相談などの奉仕活動を行ってきた。 その過程で、助けを求めている人や何かの役に立ちたいと思っている人がいかに多いかを知り、日々高まるニーズに対応するためには同胞たちとのネットワークを築いていくしかないという結論に達した。 そして、自分たちの力不足を認識し勉強会を進めていくうちに、ある法律の存在を知った。それが「特定非営利活動促進法(NPO法)」だ。 NPO(民間非営利組織)とは一般的に、なんらかの社会貢献、すなわち不特定かつ多数の人の利益の増進に寄与することを目的とした非営利活動を行う民間団体のことを言い、そのうち法人格を取得した団体のことを「NPO法人」と呼ぶ。 また非営利とは、活動によって得た収益を構成員(ボランティアなど)に分配せず、その団体の目的達成のための活動に充てられるという意味だ。 法人格のメリットとしては、団体の名で契約の主体となることや、動産、不動産などの所有が可能になり、なにより社会的信用が高まり、事業計画のいかんによって行政当局から助成金などが支給される。 「綜合センターが同胞社会はむろんのこと、日本の社会から信用を得るためには、NPO法人を得るしかないと強く思った」(金日宇所長、43)。 金所長は昨年、その方途をさぐるため、同胞高齢者の「デイサービス」を実施し、本部単位の福祉分野で初めて「NPO法人」を取得した京都コリアン生活センター「エルファ」をはじめ、近畿地方の各綜合センターを訪れた。 とりわけ「エルファ」の事業経験をとおして、日本の社会では法的資格が社会的認定であり信用だということを、また法人化によって、同胞らの歴史と現状に合ったきめ細かい福祉事業を展開できることを認識した。 助成金の給付、ボランティアの拡充 簡易な手続きで法人格を取得できることを知った所長は、NPO法人ガイドブック(県発行)に記載された様式に基づいて、法人の対象となる12項目の要件および人選と構成、法人化した場合の収益性などを綿密に検討し、申請書、定款書などをそろえた。その際、県の窓口の担当者から適切なアドバイスを受けた。また、自らホームヘルパー2級も取得した。 具体的準備が整い昨年10月、県に申請書を提出。 「県内在住の在日コリアン子弟の健やかな成長と高齢者、障害者のために、ボランティア活動などの事業を行い、県民として地域社会に貢献することを目的とする」と明記した。 事業計画としては、在日コリアン高齢者の歴史と現状に基づいた介護事業、障害者および子育てを支援するボランティア活動、地域社会における異文化交流促進の場としてのコリアン文化教室の運営、県在住のコリアンの歴史文化財保護と発展のためのボランティア活動を上げた。また初年度には、同胞高齢者からなる長寿会とウリマル、朝鮮料理などのサークルの運営および介護事業を行うと記した。 「教育、文化分野にはわれわれがこんにちまで築き上げた経験があるが、福祉はまだまだ弱い。愛国運動に貢献してきた1世たちに奉仕できる立派なものを残したい」(金日宇所長)。 法人化によって、同綜合センターによる介護サービスの実施と各種の設備や器具などの購入に行政からの助成金が充てられ、介護事業に朝鮮学校出身のボランティアや専門家を多く網羅できることが可能になった。 4月13日、NPO法人の第1回設立総会を開く同綜合センターは、これから「デイサービス」などの福祉事業と、民族の文化と伝統を伝えていく「多目的プラザ」を設け、よりいっそう、同胞コミュニティーの場としての機能を発揮していくことができるよう、全力を尽くしていくという。(金英哲記者) |