春・夏・秋・冬

 狂気の沙汰、とはこのことではないか、と思う。イスラエルの、パレスチナに対する無差別の軍事攻撃である。そしてその目的が、アラファト議長の排除にあるという本音を今や隠さない。自治政府住民の選挙で選ばれた議長を、他国が力づくで排除するなど、それこそイスラエルやその最大支持者の米国が好んで口にする、民主主義と自由の破壊以外の何ものでもない

▼イスラエルの論理は正当で、パレスチナの論理は不当だとする米政権の対応は、彼らが政治の常とするダブルスタンダード(2重基準)の典型的な使い分けである。このダブルスタンダードこそが、冷戦構造崩壊後の国際社会を大混乱に陥れた源であることは多々指摘されてきたことだ

▼また彼らはそれを、さまざまなケースに合わせて臨機応変に使い分けたりもする。アラファト議長に対する攻撃は、パレスチナ住民と議長との間に楔(くさび)を打ち込むことにあることは三尺童子にも明らかだ。だから決して、アラブ社会全体の問題としては波及させず、あくまでアラファト議長個人の問題として限定する。つまり議長がいなくなれば攻撃は中止され、平和が訪れるのだ、と

▼2月、ソウルを訪れた際にブッシュは、朝鮮に対しても同じようなことを口にした。「北の住民が問題なのではなく、体制なのだ」と

▼その国の指導者、体制を選択するのはその国の人々である。そこに第3者が口出しする資格もなければ、権利もない。国際社会のルールである。それを踏みにじる勢力は民主主義、平和の敵だと断罪するほかにない。(彦)

日本語版TOPページ